共同配送とは?その仕組みと基本概念
共同配送とは、複数の企業が協力して配送ルートや車両を共有し、商品を一括で運ぶ配送形態のことです。各企業が別々に配送するのではなく、1台のトラックに複数の企業の商品を積み合わせ、効率的に配送を行うことで、コスト削減や環境負荷の軽減を目指します。競合他社同士はもちろん、業種の違う企業同士でも共同配送は可能です。
複数企業による配送の統合
各企業がそれぞれ配送車両を出さなくてもよいようにし、配送コストを削減することです。例えば、A社、B社、C社の製品を1台のトラックにまとめて配送します。これにより、複数の車両が必要なくなります。
配送ルートの最適化
共同で配送する場合、ルートの最適化が重要になります。無駄のないルート設定で、時間や燃料の削減が可能になります。ルートの管理には、物流のプラットフォームやAIを活用して、各企業の商品の配達先を組み合わせた最適な経路を決定します。
小規模事業者の負担軽減
小規模事業者は、単独で配送するよりも大手や他の企業と共同で配送する方がコストを抑えることができます。大手物流会社が共同配送ネットワークを構築し、複数の小規模事業者をまとめることで、効率的な配送が可能になります。
共同配送が注目される理由
共同配送が注目される大きな理由として、2024年問題が挙げられます。
2024年問題とは物流業界が抱える課題で、働き方改革で定められたドライバーの労働時間上限によって引き起こされる問題のことで、労働時間の上限は960時間になり、対策を打たないと2024年に14%、2030年には34%の輸送力低下が起こると言われています。
こうした2024年問題による物流業界のピンチを乗り越えるためにも共同配送に注目が集まっています。
参照)消費者庁『物流の「2024年問題」と「送料無料」表示について』
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/other/free_shipping/index.html
共同配送のメリットとは?
注目されている共同配送ですが、その実現にはメリット・デメリットがあります。詳しく解説していきます。
効率的な配送と運用
共同配送を利用するメーカーや企業にとって、最も大きなメリットが配送の効率化です。共同で配送ルートや拠点を最適化することで、無駄のない配送が可能になります。
配送トラックの稼働率が上がり、少ない台数で多くの商品を運ぶことができるため、より効率的な運用が可能です。
例えば、大型家具や生鮮品など、特定の商品に特化したドライバーに共同配送を依頼することで、安心して商品を預けることも可能になります。
輸送費や人件費などのコスト削減
複数の企業が一緒に配送するため、1台のトラックにまとめて商品を運ぶことができるようになるので、燃料費や人件費などの配送コストを分担でき、各企業の負担が軽くなります。
燃料費の高騰が著しい今、物流コストは企業にとって重要な課題です。配送費用を効率的に抑えられるため、特に中小企業にとって大きなメリットとなります。
このようなコスト削減は、商品の価格にも影響を及ぼすものなので、エンドユーザーにとってもメリットがあります。
環境負荷の軽減
トラックの台数が減ることで、CO2排出量が減少し、環境への負荷が軽減されます。
これは、企業が環境保護に貢献できるだけでなく、サステナブルな物流を目指す企業のイメージアップにもつながります。
人手不足解消
トラックの台数が減ることで、配送ドライバーの数が少なくても、効率的に配送できるようになります。物流業界でのドライバー不足の問題を緩和し、より少ない人員で効率的に配送が可能になります。
小規模事業者の支援
個別の配送が難しい小規模事業者も、大手企業と共同で配送できるため、コストを抑えながら自社商品を届けることが可能になります。小規模事業者が物流コストの負担を減らし、事業の拡大や安定的なサービス提供が可能になります。
地域経済の活性化
地域内での共同配送を行うことで、地元の企業間の協力関係が強まり、地域経済の活性化にもつながります。
地域に密着したネットワークを構築し、配送サービスの利便性向上や地域の企業との連携強化が期待されます。
共同配送のデメリットとは?
上記のように、共同配送はメリットの大きい仕組みですが、デメリットもあります。共同配送を行う上で留意しておくべき点を、以下詳しく見ていきましょう。
共通のシステムが必要
複数の企業が同じ配送車両やルートを共有するため、配送スケジュールや商品管理には共通のシステムが必要になり、細かな調整が必要です。調整に手間がかかり、場合によってはコストが増加することがあります。
特に、異なる業種や規模の企業間でスケジュールや条件を合わせるのが難しい場合があります。
共通システムを使用する場合は顧客情報や社内の情報も共有することになるため、情報の取り扱いや機密保持についての取り決めをすることも重要になります。
料金設定が難しい
各社独自の配送料金を設定しているため、共同配送を行う際は新たに料金設定を行う必要があります。また、請求方法や支払い方法も各社で異なるため、統一しなければなりません。共同配送では、こうした料金の設定についても各社が連携をとらなければいけません。
トラブル発生時の影響が大きい
事故や天候、車両の故障などのトラブルが発生すると、複数の企業の商品に影響が及ぶため、対応が難しくなります。
トラブルが発生した場合、複数の企業が一度に影響を受ける可能性があるため、対応が複雑化し、顧客の要望やトラブルに応じて臨機応変な対応をとることが難しくなり、顧客満足度の低下につながる可能性があります。
共同配送に適する商材
共同配送に適する商材は、配送スケジュールの柔軟性がある、温度管理の複雑さが少ない、そして大きさや形状が扱いやすいものが中心です。以下、具体的な例を挙げて説明します。
常温保存が可能な食品や飲料
パスタやお米、瓶入りのジュース、缶詰などの商品は冷凍や冷蔵といった温度管理が不要で、他の商材と一緒にまとめて配送しやすいため、共同配送に向いています。温度管理の設備が不要なため、輸送コストが抑えられ、効率的な配送が可能です。
日用品やアパレル商品
消耗品の洗剤やトイレットペーパーなどの日用品は、比較的軽く、壊れにくい商材であり、サイズや形状も一定なので積載しやすいです。また、緊急性が少ないため、共同配送での配送スケジュールにも柔軟に対応できます。
同じく、アパレル商品や雑貨も、軽量で扱いやすく、壊れにくい特徴があり、配送スケジュールに厳しい管理が必要ないため、他商材とのまとめやすさが特徴です。
これらの商品は配送の柔軟性も高いことから、共同配送においても効率的に運ぶことができます。
化粧品や医薬部外品
シャンプー、ローション、日焼け止めなど、医薬部外品や化粧品の多くは常温で保管でき、破損のリスクも比較的少ないため、共同配送に適しています。ただし、瓶入りの製品は適切な緩衝材が必要です。軽くてコンパクトな製品が多いため、他の商材と一緒にまとめやすく、効率的に配送できます。
ドラッグストアや処方箋薬局、病院では、さまざまなメーカーの医薬品を取り扱っていますので、共同配送でまとめて届けることができるようになれば、効率化とコストダウンが可能になります。
また、市販の医薬品を取り扱うドラッグストアなどはもちろん、今後、病院や老人ホームなどへの共同配送も増加していくと考えられます。
反対に、共同配送に適しない商材としては、生鮮食品、冷凍・冷蔵食品などの温度管理が厳しい商品や、危険物や特殊薬品など取り扱いが難しい商品などが挙げられます。
大手企業に学ぶ、共同配送の事例
株式会社ローソン×株式会社ファミリーマート
株式会社ローソンと株式会社ファミリーマートは、2024年4月から東北地方の一部地域において、アイスクリームや冷凍食品などを対象とした両社の物流拠点間の輸送を行います。両社の商品を同じトラックに混載し、共同で輸送することで車両台数およびCO2排出量削減を目指します。
両者は2020年8月と2022年2月に実施した大手コンビニエンスストア3社の共同配送実証実験に参加し、実証実験終了後も、社会インフラとしての役割も担う両社が、安定的に商品を供給するための物流網の維持・構築は非常に重要と考え、協業の実現に向けて、両社で協議や実験を継続してきました。
今回、両社の配送拠点の位置が条件に合致した事と、トラックに混載するスキーム構築が整ったため、共同輸送の実現にいたりました。全国に店舗網を持つコンビニエンスストアとして、持続可能な供給体制構築の為、今後は他エリアへの拡大も視野に検討を進め、更なる効率化に取り組んでまいります。
参照)
https://www.lawson.co.jp/company/news/detail/1485922_2504.html
佐川急便株式会社
佐川急便株式会社は、パン業界全体が配送コストの高騰やドライバー不足に悩んでいることを知り、パン業界の課題解決のために、「パンの共同配送」実現しました。パンメーカーは独自の配送網を築き、スーパーなどの小売店にパンを納品していますが、納品先は同じ店舗ということが多く見受けられ、その非効率を解消するため、共同配送センターを用意し、各メーカーの商品を取りまとめて小売店へ配送するスキームを構築しました。
配送が効率化されたことで、配送コスト・配車業務の削減につながったことはもちろん、配送車両台数が減ったことによるCO2排出量削減(年間18.7%削減)にもつながっています。
参照)
https://www.sagawa-exp.co.jp/logistics/casestudy/25/
イオンモール株式会社
イオンモール株式会社は、物流課題の深刻化が進む中、パートナーである専門店企業の皆さまへの価値提供として共同配送サービスを開始し、専門店企業やメーカー企業の物流拠点から、イオンモール、他社商業施設、路面店等の店舗への集荷・配送を担うことで、集荷・配送の双方で効率化を図ってきました。
2024年問題や燃料費の高騰等の物流課題の解決に向け、エリア限定で実施してきた共同配送サービスの提供エリアを拡大しました。 2023年2月より近畿・東海エリアへのサービス提供を開始しましたが、多くの企業さまからのご要望にお応えし、この度、提供エリアを7エリア24都道府県に拡大しました。
今後もパートナーである専門店企業のコスト削減と物流品質の維持を実現するとともに、 持続可能な物流網の構築にも寄与してまいりますとしています。
参照)
https://www.aeonmall.com/wp/wp-content/uploads/2023/12/9e4c3c0e7d3347355182ee43274ff368.pdf
このほか、アスクル株式会社、キリンビバレッジ株式会社、株式会社スギ薬局、日本製紙株式会社、YKK AP株式会社など業種の異なる国内5社が、製品や荷物を混載する形で共同配送を検討しており、物流データの共有化や時短につながる効率的な経路の検討を今後進め、2025年の実施を目指しています。
まとめ〜共同配送の未来と展望〜
CO2排出を抑えた配送システムの推進
持続可能な社会へのニーズが高まる中、物流業界にも環境負荷の低減が求められています。特に脱炭素化の目標に向け、CO2排出を抑えた配送システムが不可欠です。
共同配送では、配送トラックの台数を減らし、1台の車両で複数の企業の商品を運ぶため、CO2排出量が抑えられます。
今後、企業や自治体の支援も進むことで、環境に配慮したサステナブルな物流として一層普及が進んでいくでしょう。
デジタル技術との連携強化
IoTやAI、ビッグデータなどのデジタル技術が物流業界に浸透し、より正確で効率的な配送が可能になっています。
共同配送の効果を最大化するために、デジタル技術と連携したスマート配送が進むでしょう。AIで配送ルートを最適化したり、IoTでリアルタイムの車両追跡や在庫管理を行ったりすることで、迅速かつコスト効果の高い物流が実現されます。
また、5Gの普及により、リアルタイムで配送状況を共有し、トラブル時の即時対応も可能になるでしょう。
EC市場の拡大によるラストワンマイルの効率化
EC市場の拡大に伴い、消費者のもとに商品を届ける「ラストワンマイル配送」の負担が増加しています。
共同配送により、複数の企業がラストワンマイル配送を共有することで、配送効率が向上します。今後は、宅配ボックスの普及や地域ごとの集積拠点を活用したラストワンマイルの最適化が進み、ドライバー不足の解消や配送コスト削減が実現されるでしょう。
ロボティクスや自動運転の導入
ドライバー不足が深刻化する中、ロボティクスや自動運転技術が物流業界に広がり始めています。
共同配送と自動運転技術を組み合わせることで、ドライバー不足の緩和が期待されています。特に長距離配送では、トラックの自動運転が進むことで、夜間や長時間の移動も効率的に行え、物流全体のコストが抑えられるでしょう。
共同配送の未来は、環境負荷の削減、デジタル技術との融合、ラストワンマイルの効率化といった多方面での進化が期待されています。企業間の協力体制やテクノロジーの活用により、よりスマートで持続可能な物流モデルが構築され、物流業界全体が効率的かつサステナブルな方向へと進化していくでしょう。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。