究極の物流シェアリングといわれる「フィジカルインターネット」とは?

究極の物流シェアリングといわれる「フィジカルインターネット」とは?

 

物流シェアリングについて今すぐご相談したい方はこちら

フィジカルインターネットとは?

フィジカルインターネットは、デジタル情報の代わりに「もの」をトラック、貨物列車、船、航空機などの輸送手段によって各地の物流センターを順次リレーして送るビジネスモデルのことを言います。

 

トラック等が持つ輸送スペースと倉庫が持つ保管・仕分スペースをシェアすることによって、物流リソースの稼働率を向上させ、より少ない台数のトラックで荷物を運搬することで、消費燃料を抑制し、地球温暖化ガス排出量を削減します。

 

持続可能な社会を実現するための革新的な物流システムのコンセプトです。

パケット交換、回線の非占有など、インターネット通信の考え方を物流(フィジカル)に適用しているため、フィジカルインターネットと呼ばれています。

出典:野村総合研究所(NRI)

 

フィジカルインターネットの必要性とは?

サプライチェーン・物流を取り巻く環境は、COVID-19やウクライナ情勢などによる長期化する経済不況や、物流コストの上昇などの社会環境の急速な変化や複雑なトレードオフ、そして2024年問題や物流革新緊急パッケージなど、早急に対処しなければならない状況が生じています。

 

なかでも物流コストは、宅急便の価格の急騰が特に顕著で、外航海運の影響が大きい海上貨物輸送に比べ、短期的な価格変化ののち、固定化していく傾向にあります。

 

貨物輸送量の需要が増加する中で、トラックドライバー数は減少傾向で推移しており、2024年問題に対して何も対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力が2024年には14.2%、さらに2030年には34.1%不足する可能性があると試算しています。

 

このような物流課題の解決に対して、単独の企業で進めることは難しく、複数の企業間でデータを共有し、共同輸送による効率化、輸送資材や業務プロセスの標準化による効率化を進める必要があります。そこで「フィジカルインターネット」の考え方が物流課題解決の方法として生まれました。

 

フィジカルインターネットのメリットは?

物流の効率性の実現

これまでの配送方法では自社が請け負った荷物の量に関係なく配送をしなければなりませんでしたが、フィジカルインターネットでは複数の企業の荷物をまとめて積載することができるので、積載効率を上げることができます。

トラックの稼働効率や配送ルートの最適化により、二酸化炭素排出量を減らすこともできます。

 

ドライバーの労働環境改善

一度に多くの荷物配送を可能にするフィジカルインターネットは、ドライバーの業務負担の軽減にも繋がります。

稼働台数をおさえられるため、今までよりも少ない人数で運用することが可能になり、さらに労働環境も大きく改善され、離職率の低下も期待できます。

 

社会インフラの課題解決

フィジカルインターネットを実現すると、ユニバーサル・サービスを提供できる社会インフラを形成できます。

ユニバーサル・サービスとは、全国一律で安定した価格を提供できるサービスのことで、物流においても、地域間の格差や買い物弱者への対応など、効率的な物流ができていない問題があります。

 

輸送資源の乏しい地域でも、フィジカルインターネットで開放的・中立的なデータプラットフォームを活用すれば、効率的な物流サービスを提供できるでしょう。

 

フィジカルインターネット実現の課題とは?

フィジカルインターネットを実現できれば、上述のような物流の効率性や人手不足の解消、社会インフラの課題解決、温室効果ガス排出量の削減につながります。

しかし、実現にはさまざまな課題があるのが現状です。

 

荷物サイズの標準化

フィジカルインターネットは、積替えを前提として輸送の途中に中継点を設け、受け渡しする貨物の規格を統一し、物流リソースを共有化してモノのやりとりをしようという考え方のため、経由地が増加することによる輸送・積替え時間や荷役コストの増加、損傷リスクが新たに発生します。

それを回避するためには、「荷姿(コンテナ)」「物流結節点(ハブ)」「輸送規約(プロトコル)」の3要素を標準化する必要があります。

 

情報共有システムの構築

フィジカルインターネットにおいて、物流業界は複数の企業で業務をおこなう体制であるため、急な変更や追加などの業務への対応や、荷物がどこにあるのかなどの状況把握が困難な場合があります。

そのため、倉庫の空き状況や最適ルートの情報をリアルタイムで共有できる企業間での情報共有システムの構築が必要です。

 

国内外におけるフィジカルインターネット

海外におけるフィジカルインターネットの事例

ヨーロッパでは2013年にロジスティクス分野における研究開発・イノベーション政策の意思決定を支援する目的で、大手企業や研究機関、行政などが参加して欧州物流革新協力連盟(ALICE)が設立されました。ALICEが2020年にフィジカルインターネットのロードマップを策定しました。

 

米国Amazonは独自で持つ配送網を他社にも解放し、物流リソースを共有するなど、フィジカルインターネット実現に向けた動きを見せています。

また、航空物流の拠点となる空港施設をドイツの物流大手会社であるドイツポストDHLとシェアしており、米国と欧州の時差により生じる稼働ピーク時間の差をを有効に活用して物流の効率化を図っています。

 

日本におけるフィジカルインターネットの事例

日本でも大手物流会社を中心に、フィジカルインターネットに注目が集まりつつあります。

 

F-LINE株式会社

F-LINE株式会社は、「競争は商品で、物流は共同で」という理念をもとに大手食品メーカー5社(味の素、ハウス食品、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオ)の共同出資により発足しました。

 

将来の労働力人口の減少への対応と環境負荷の低減に対し、「共同配送」「先進物流技術の開発・活用」「多様な人財登用と働き方の推進」などの取組みで、持続可能な食品物流の構築を目指しています。

 

大手コンビニ3社での共同配送

セブンイレブンやローソン、ファミリーマートの大手3社は、都内に設置した共同物流センターに各社の商品を集め、共同配送トラックにより効率化されたルートでエリア内のコンビニ全体へ配送するという実証実験を開始しました。

 

その結果、チェーンごとに配送する場合と比較し、配送距離が短縮され、またCO2排出量の削減やトラック回転率の向上、積載率の改善などの改善効果も確認されています。

 

15の運送事業者が参画する「ボックスチャーター」

ヤマト、日本通運、西濃運輸など15の運送事業者が参画する、中ロット荷物の共同配送が、2006年から始まっています。

 

ボックス単位での輸送は、荷物の積替え作業が不要となることで、ドライバーの作業負担の削減につながっています。

また、各運送会社が協力して輸送ネットワークを構築することで、お客様へ高品質なサービスを提供しています。

 

また、2024年5月には、伊藤忠商事株式会社、KDDI株式会社、株式会社豊田自動織機、三井不動産株式会社、三菱地所株式会社の5社が、2024年度中のフィジカルインターネットの事業化に向け共同検討し、業界を横断したパートナー5社で物流改革を推進し、国内における物流の2024年問題の解決を含む持続可能な物流の実現を目指すと発表しました。

 

アイディオットの取り組み

株式会社アイディオットは、JPIC 一般社団法人フィジカルインターネットセンターに参加しています。

JPIC 一般社団法人フィジカルインターネットセンターとは、フィジカルインターネットの実現により、物流の安定供給と環境負荷の削減に貢献することを目的とし、ニューノーマル時代に適合した物流のあるべき姿を築くことを目標に掲げ、物流の大改革によって人々から歓迎される業界となり、物流そのものの地位を上げるためにフィジカルインターネット実現に向けた組織を設立されました。

(JPICの紹介より引用)URL:https://j-pic.or.jp/ 

 

当社は国家重点プロジェクトとして内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(以下「SIP」)の1つである「スマート物流サービス」において物流標準化のためのデジタルツインの研究開発を行ってまいりました。

その結果、現在『ADT(アイディオット・デジタルツイン)』という製品として多くの荷主企業様、物流企業様にご活用いただいております。

 

一方で2024年問題や物流革新緊急パッケージにも挙げられている通り日本が直面している物流・サプライチェーンの課題はより根深いものとなっております。

そこでJPICは内閣府主導SIPの後続団体として発足し、研究開発から社会実装フェーズへの架け橋をしています。

 

JPICを通じて、会員企業様との情報交換、連携強化を図り、積極的な参加を目指して参ります。

また、JPICの趣旨に協調し、業界や企業の垣根を越えた最適化、フィジカルインターネットの実現へ努めて参ります。

 

サプライチェーンのDXをAI・デジタルツインなどの新技術で支援。カーボンニュートラルの実現に向けたCO2排出量の可視化・削減シミュレーションにも対応する物流特化のサービス。先ずは無料の資料請求から。
この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

物流・倉庫カテゴリの最新記事