巣ごもり需要によるECサイトの利用増などから、宅配便の取扱件数は年々増加傾向にあります。その一方で運送業界にしわ寄せが来ており、現場には多大な負担が生じています。
運送業界は、現在労働力不足やドライバーの長時間労働など様々な問題を抱えています。さらに小口配送増加に伴って一人ひとりの負担も増しており、こうした課題の解決が急務となっています。
これらの問題を解決する手段として、運送DXに関心が高まっています。取り組み次第では労働力不足やドライバーの負担軽減など、各種課題を一挙に解決できる可能性を秘めています。
運送DXとは?なぜ今求められているの?
DXとは、インターネットやAI、デジタル技術を組み合わせた取り組み全般を言います。主に省力化や効率化、自動化を目的として行われるもので、様々な業界がDXに取り組んでいます。
運送DXは運送業界にスポットを当てたもので、業界が抱える課題の解決策になると期待されています。運送DXは大手を中心に取り組みが始まっていますが、今後は中小企業でも取り組みが求められるでしょう。
深刻な労働力不足
運送DXが求められる理由として、業界の慢性的な労働力不足が挙げられます。現在の運送・物流業界は、なり手不足による深刻な労働力不足が問題になっています。特に状況は年々悪化しており、現場のスタッフ一人ひとりに大きな負担が生じているのが実情です。運送業界は高齢化も深刻で、労働力の不足に拍車をかけています。
このような状況を改善するためには、物流DXによる省力化や業務効率の改善が必要になります。
低賃金・長時間労働によるドライバーの負担急増
ドライバーの負担が急増していることも、運送DXが求められる理由です。運送業界の最前線で働くドライバーは、人手不足の影響で長時間労働を強いられています。さらに個人向けの小口配送が増加しており、単価下落による低賃金も問題になっています。ドライバー数を増やせば一人ひとりの負担が軽減され、労働環境の改善も可能でしょう。
しかし、実際には簡単にいかないため、運送DXによるドライバーの負担軽減が求められています。
小口配送に伴う出荷量の増加
出荷量の増加も、運送DXが必要とされる理由のひとつです。EC市場は年々拡大傾向にありますが、背景には個人ユーザーの利用増加があります。経済へ与える影響を考慮すると喜ばしい状況ですが、運送業界にとっては手放しで喜べません。
ECの拡大によって宅配便が小口化し、ドライバーが取り扱う荷物の量も増加しています。再配達も問題で、ドライバーの長時間労働に繋がっています。このような状況から現場に大きな負担が生じており、運送DXの重要性が高まっています。
運送DX、具体的に何をやっているの?
運送DXは、運送業界が抱える課題を一挙に解決する可能性すら秘めています。しかし、どのような取り組みが行われているのかと、疑問を感じる方も少なくないでしょう。
実際の内容は企業によって異なりますが、運送DXにおける主な取り組みは次の3つです。現在運送DXを検討中の方は、参考にしていただければと思います。
AI活用による配送ルートの最適化
まず、AIを活用した配送ルートの最適化です。現在のドライバーの位置や積荷の状態をAIが判断し、最適な走行ルートを割り出します。どの荷物を・どの順序で運ぶかをAIが提案するため、ドライバーは運転に集中できます。
配送が効率化されることで、ドライバーの長時間労働改善や負担軽減に繋がります。走行距離も短縮化できるため、燃料コストの削減も可能になるでしょう。
ドライバーの動きをモニタリング
現在のドライバーの位置などをリアルタイムでモニタリングし、適切な指示を出せるようになります。拘束時間や休憩時間の管理も容易になり、ドライバーの労働環境改善に繋がるでしょう。
依頼主にもっとも近いドライバーに配車を手配できるなど、業務効率の向上も期待できます。
各種手続きのオンライン化
運送業界には、集荷や再配達など様々な手続きがあります。これらをオンライン化すればオペレーターの負担が軽減され、人員も減らすことが可能です。
電話などでの対応に時間を取られずに済み、業務効率もアップするでしょう。PC・スマホから手続きできるようになれば、ユーザーの利便性やサービスの品質も向上します。
運送DXを行うメリットは?
労働力不足の解消や現場の負担軽減など、運送DXで解決できる課題は多数あります。もはや必要不可欠とも言えますが、運送DXに取り組むことで得られるメリットも少なくありません。特に労働環境の改善や省力化でお悩みなら、前向きに検討することをおすすめします。
様々な情報をリアルタイムで管理可能
運送DXを導入することで、あらゆる情報をリアルタイムに取得・管理可能になります。例えば、GPSや通信機能を備えた車載機器と連動すれば、車両の運行状況やドライバーの位置をリアルタイムに取得できます。他にも、集荷状況や顧客からの問い合わせなど様々な情報を逐一取得することで、サービスの向上も可能になるでしょう。
データを分析して経営判断に活用
経営面にも良い影響を与えます。運送DXは膨大なデータを蓄積し、データベース化することが可能です。蓄積したデータを分析することで、経営状態の客観的な判断や今後の戦略に活用できるでしょう。現在自社が置かれている状況を把握し、経営環境の改善に繋げることも可能です。
コスト削減・業務の効率化にも繋がる
コスト削減や業務効率化にも寄与します。運送DXは様々な作業をオートメーション化し、各種業務のデジタル化を実現します。例えば、検品に専用の端末を導入すれば作業効率がアップし、入力漏れなどのミスを防止できます、AIとロボットによる搬入出や仕分けなど、様々な作業を自動化可能です。単純作業にDXを導入するだけでも、コスト削減と業務効率化を実現できるでしょう。
運送DXで解決できる課題。事例のご紹介!
実際に運送DXへ取り組んでいる企業の事例を紹介します。参考にすべき点も多数ありますので、運送DXの導入を検討中の方、活用方法を知りたい方は必見です。
SGホーディングス(佐川急便)
佐川急便は、社を挙げて運送DXに取り組んでいる企業です。中でも特徴的なのはAIを使用した取り組みで、手書き文字を読み取る際に活用されています。この他にも再配達伝票から最適なルートを割り出すなど、ドライバーの負担軽減に繋がる取り組みを行っています。
日本通運株式会社
日本通運では、各種作業の効率化を進めるために運送DXに取り組んでいます。特にロボット・RPAを使用したDXに積極的で、現場に多数のロボットを導入しています。作業計画や報告、発注や支払いなどの簡単な作業を自動化し、作業時間の削減と業務効率向上を実現しています。
ヤマト運輸
ヤマト運輸は、YDPというプラットフォームを立ち上げるなど、運送DXを進めています。それによって事業データを一元管理し、データ分析や荷物情報のリアルタイム連携などを実現しています。他にも、C2C向け宅配サービスのEAZYを立ち上げるなど、DXによる効率化に積極的です。一方で社員のDX教育にも力を入れ、スキル向上とデジタル人材化にも取り組んでいます。
運送DXを推進する際の注意点
運送DXへ取り組んでいる企業は少なくありませんが、現場無視で推し進めるのは危険です。特に従来からIT化を進めていなかった場合、従業員が戸惑ってしまうこともあるでしょう。これから運送DXへ取り組むなら、その前に解決すべき問題も存在します。
リテラシー不足の乗り越えが最初のポイント
運送業界は基本的にアナログで、デジタルに対する戸惑いやスタッフの理解力不足があるのが実情です。そのため、最初のリテラシー不足をどう乗り越えるかが大きな壁になるでしょう。急速にDXを進めると現場の混乱を招くため、慎重に進めることが求められます。
戦略立案から実行支援まで可能なAidiotが支援
どのようにDXを進めるべきか迷ったら、Aidiotを検討してはいかがでしょうか。Aidiotなら運送DXの導入戦略の立案はもちろん、実行に向けた強力なサポートも受けられます。スタッフのITリテラシーを高めつつ、DXを推し進められます。
まとめ
労働力不足やドライバーの負担増加など、運送業界が置かれている状況は年々悪化しています。このような状況を改善するためには、運送DXによる省力化や効率化が必要不可欠でしょう。運送DXは大きな可能性を秘めており、労働環境改善やコスト削減、生産性向上に寄与します。自社の現場に限界が来る前に、運送DXに取り組んではいかがでしょうか。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。