二酸化炭素の排出量増加に伴い、地球温暖化による影響が年々深刻さを増しています。気候も極端になっており、干ばつや巨大なハリケーン、大規模な森林火災など温暖化によるものと思われる現象が相次いでいます。日本でも異常な高温や寒波、1時間に数十ミリを超える豪雨など自然災害が増加傾向にあります。
このような状況の中、脱炭素社会の実現に向けた取り組みも始まっています。しかし、脱炭素化へ向けて解決するべき課題も山積みしています。脱炭素社会を目指すのであれば課題を一つずつ解決し、個人レベルでの積極的な取り組みも求められます。
脱炭素社会とは
近年は脱炭素社会という言葉を耳にする機会も増えましたが、具体的な内容を知らない方も少なくないでしょう。低炭素社会との違いが分からない方も多いと思います。そこで、脱炭素社会や低炭素社会との違いについて解説します。
二酸化炭素排出量ゼロ社会
脱炭素社会を端的に言うと、二酸化炭素の排出量ゼロを実現した社会のことです。具体的には、化石燃料に変わるエネルギーを使用し、ゼロ・カーボンにすることが主な目標となります。2010年代より広まり始めた言葉ですが、あくまで実質ゼロを目指すことが大きな特徴です。
例えば、製品製造の過程で二酸化炭素を1トン排出した場合、別の部分で二酸化炭素を1トン削減することが挙げられます。特に身近な施策としては、太陽光発電など再生可能エネルギーの使用があります。電気自動車や水素燃料など、脱炭素社会に向けた様々な技術開発が進められています。
低炭素社会と脱炭素社会の違い
脱炭素社会と似た言葉に低炭素社会がありますが、基本的に異なるものです。低炭素社会は二酸化炭素の排出量抑制を目指す社会であり、少なからず二酸化炭素が排出されます。一方の脱炭素社会は二酸化炭素ゼロを目指すため、より踏み込んだ概念と言えるでしょう。
1990年代に採択された京都議定書は、低炭素社会の実現を目指したものです。しかし、それでも地球温暖化は止まらず、2015年に採択されたパリ協定では脱炭素社会へシフトする内容が盛り込まれています。
脱炭素社会を目指す理由
現在の地球環境は、脱炭素化が待ったなしの状況にあります。ただ、どうして脱炭素社会を目指すのかと疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
化石燃料の減少
脱炭素社会を目指す理由として、まず挙げられるのが化石燃料です。車のガソリンや船舶に使われる重油などの化石燃料は、二酸化炭素の大きな排出源となっています。地球温暖化に及ぼす影響が非常に大きく、消費を削減することが脱炭素化には欠かせないのです。
産業には欠かせない化石燃料ですが、今後は代替燃料やエネルギー源へのシフトが求められています。化石燃料に代わる有望なエネルギー源は色々ありますが、まだ普及までには至っていません。
地球温暖化への対策
地球温暖化対策も脱炭素社会を目指す理由です。身近な影響を感じている方も多いと思いますが、夏の熱波や冬の寒波、局地的大雨などは温暖化の影響と言われています。
日本では、こうした異常気象が年々増えており、脱炭素社会を実現し地球温暖化を食い止めることが不可欠な状況となっています。脱炭素社会を実現するには社会全体での大規模な取り組みはもちろん、個人レベルでの小さな取り組みも必要です。
脱炭素社会実現へ向けての課題
地球温暖化防止のために、速やかな脱炭素社会の実現が必要不可欠と言っても過言ではありません。しかし、実際は簡単にはいかず、いくつかの課題を解決しなくてはいけないのです。特に産業界全体での取り組みや、主要エネルギーの転換が脱炭素社会実現に向けた課題となっています。
鉄鋼業界での二酸化炭素排出量
二酸化炭素を排出する産業は多数ありますが、中でも多いのが鉄鋼業界です。鉄鋼業は、日本の二酸化炭素排出量の1割を占めるとされており、脱炭素化の足かせにもなっています。製鉄には多大なエネルギーが必要ですが、その際に使用するエネルギーを石炭に頼っているのが実情です。
このような状況を脱するための技術開発が進んでいるものの、未だ実用化には遠い状況となっています。
自動車業界の脱炭素化が遅れている
鉄鋼業界だけでなく、自動車業界の脱炭素化にも遅れが見られます。自動車は技術開発によって年々燃費が向上し、PHEVの登場によって以前よりは脱炭素化が進んでいます。
しかし、完全な電気自動車はまだ普及が進んでおらず、水素自動車にいたっては実用化に高いハードルがあります。今後脱炭素社会を目指すのであれば、より一層の自動車技術の革新が求められるでしょう。
エネルギーの大半が化石燃料
日本が消費するエネルギーに目を向けてみると、その大半を化石燃料に頼っています。個人レベルで見れば、オール電化や太陽光発電などの普及が進んでいるものの、全体では化石燃料に頼らざるを得ない状況です。
石油はもちろん、石炭や液化天然ガスに頼り続ける限り、脱炭素化は難しいと言えます。
社会の取り組み事例
脱炭素化には様々なハードルがありますが、そのような中でも着実に脱炭素社会へ向けた取り組みが始まっています。そこで、社会で実施されている脱炭素化へ向けた取り組みをいくつか紹介します。
カーボンプライシング
まず挙げられる取り組みがカーボンプライシングです。カーボンプライシングとは、主に二酸化炭素そのものに価格をつける制度を言います。
例えば、二酸化炭素を排出する企業に対し、課税することで二酸化炭素の排出を抑制する炭素税が挙げられます。二酸化炭素の削減に合わせて価格をつける、クレジット取引も当てはまります。
グリーン成長戦略
グリーン成長戦略も社会的な取り組みの一つです。日本政府が推進しており、基金の創設や民間投資の促進、規制緩和などを含めた内容となっています。グリーン成長戦略は、再生可能エネルギーやバイオ燃料を積極的に導入し、社会構造の変化を促すことが期待されています。
長期的な戦略であるものの、脱炭素社会の実現へ向けたロードマップとなる可能性を秘めています。
RE100
RE100とは、再生可能エネルギー100%を指す用語です。主に企業が使用するエネルギー全てを再生可能エネルギーでまかない、二酸化炭素排出ゼロを目指す取り組みを指します。日本では、RE100に参画・取り組む企業も増加しており、今後の動向に注目が集まっています。
個人の取り組み
企業や国による社会的な取り組みだけではなく、個人でも脱炭素社会へ向けた様々な取り組みが行われています。普段は意識する機会も少ないと思いますが、地球温暖化抑止のために意識して行動してはいかがでしょうか。
そこで、個人でできる取り組みについて解説していきます。
毎月の生活で省エネをする
もっとも簡単な取り組みが省エネです。普段から取り組んでいる方も多いと思いますが、脱炭素社会へ向けた取り組みの一つと言えます。例えば、車の利用を控えて自転車を利用すれば、ガソリン消費が減って二酸化炭素排出を抑制できます。
太陽光発電や蓄電池の導入も二酸化炭素削減に繋がります。
毎月使用しているエネルギーの見直し
エネルギーの見直しも脱炭素社会には欠かせないアクションです。私達は普段何気なく電気などのエネルギーを使用していますが、二酸化炭素を大量に排出するものも少なくありません。そうしたエネルギーを見直すことで、脱炭素社会の実現に貢献することができます。
特にガソリンやガスの利用を控え、再生可能エネルギーを中心とした生活へのシフトが脱炭素化に寄与します。
ゼロカーボンアクション
ゼロカーボンアクションは、日常生活における脱炭素化のための取り組みや行動の指針のことを言います。環境省が推進しており、節電や節水、クールビズなど様々な取り組みがピックアップされています。
そのほとんどは簡単に取り組めるため、始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今後も二酸化炭素の排出が続くと、地球温暖化によって環境は大きく変わると考えられています。やがて臨界点を越え、暴走温室効果によって手が付けられなくなることも危惧されています。そのような状況を変えるためには、脱炭素社会の実現が必要不可欠です。
今からでも遅くはありませんので、少しずつ意識を変え取り組み始めることをおすすめします。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。