スマートシティという言葉を聞いたことはありますか。2050年までに脱炭素社会を目指している今、日本中でスマートシティを作ることは重要な課題となっています。この記事では、脱炭素社会を実現するスマートシティついてわかりやすく解説します。
スマートシティとは?
スマートシティとは、内閣府は下記のように定義しています。
グローバルな諸課題や都市や地域の抱えるローカルな諸課題の解決、また新たな価値の創出を目指して、ICT 等の新技術や官民各種のデータを有効に活用した各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、社会、経済、環境の側面から、現在および将来にわたって、人々(住民、企業、訪問者)により良いサービスや生活の質を提供する都市または地域
引用元:https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/index.html
最新技術を利用して、環境に配慮した仕組みと住民の生活の質を高める都市の両方を兼ねているのが、スマートシティです。具体的には交通・自然との共生・省エネルギー・安心安全・資源循環の5つの課題が挙げられています。
スマートシティという言葉が普及し始めた2010年頃までは、エネルギーを始め、各分野が個別で課題へ取り組んでいました。今ではスマートシティの実現には分野間の協力が必須といわれています。したがって、ICTや官民データを連携して、エネルギー・環境・交通・医療など複数の課題に「分野横断型」として取り組むことが推進されています。
スマートシティが注目される背景
近年、スマートシティが注目されているのはなぜでしょうか。日本が抱えている代表的な3つの問題と、スマートシティが注目される理由について解説します。
人口減少
日本では年々出生率が低下しており、人口減少は大きな問題です。さらに労働人口が都市部に集中していることで、地方の人口減少、高齢化はさらに深刻化しています。スマートシティはデジタル技術を駆使して、地方を住みやすくしてくれます。スマートシティが全国各地で実現すると、人口減少による地域の過疎化が解消されることから注目されています。
エネルギー消費
労働人口が都市部に集中していることは、地方だけの問題ではありません。人口が都市部に集中すると、エネルギーの消費量は大きくなります。したがって、都市部ではどれだけ効率的にエネルギーを供給するかが重要な課題です。スマートシティが実現するとインフラが効率的に運用されるので、人口が集中している都市部でも快適に暮らすことができます。
災害の頻発化と都市・地域環境
災害の激甚化、頻発化するなか、2050年の災害リスクに曝される人口比率は約73%と予測されています。二酸化炭素総排出量のうち、約5割が都市・地域の活動に由来しており、地球温暖化による気候への影響が顕在化しつつあると指摘される中、その対策が急務をされています。
市民のライフスタイルの変化とデジタル化の発展
新型コロナ危機以前から、情報通信技術の発展等の影響もあり、家にいながら買い物・交流ができる環境が整備されつつあるなど、人々のライフスタイルが大きく変化してきました。
新型コロナ危機を契機に、テレワークやコミュニケーションツールなど様々な場面においてオンラインによる活動が進行してきました。
スマートシティが解決する社会問題
人口減少や大規模災害などの問題を抱える日本は、スマートシティ実現によって得られる効果について関心を寄せています。ここからは、スマートシティが解決する社会問題について、具体的に解説していきます。
従来都市の課題
従来都市では都市部に人口が集中しており、交通渋滞や環境・治安の悪化が問題となっていました。また、地方では人口減少と高齢化が大きな課題です。
スマートシティの取り組みでは、交通面やリモートビジネス環境の形成を進めています。スマートシティが日本中で実現すると地域間格差がなくなり、都市部に流れてしまった人たちが地方で生活できるようになります。
脱炭素化加速の流れ
スマートシティ実現に向けて、太陽光・風力・水力・蓄電池などの再生可能エネルギーを活用するほか、雨水や排水を利用するなど地球に優しい取り組みが行われています。特に再生可能エネルギーの利用は、脱炭素化を加速する効果があります。
脱炭素化とは、温室効果ガスの排出量をゼロにしていくことです。世界で120以上の国と地域が、2050年までに脱炭素社会を実現するべく取り組んでいます。
自治体・地域企業の取り組み
スマートシティの実現には、国や公的機関だけでなく、地方自体や地域企業の協力も必要です。どのような取り組みが行われているのか、代表的なものを3つ紹介します。
神奈川県藤沢市「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」
神奈川県藤沢市にうまれた「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」は、先進的な取り組みを進めるパートナー企業と藤沢市の官民一体の共同プロジェクトです。
コンセプトを現実の街にするために「Fujisawa SST」は、街づくりの道しるべとなる数値目標と、それを実現するためのガイドラインを設定します。その上でタウンマネジメント会社をはじめとする街の仕組みや、5つのスマートサービスを構築。街にかかわる全ての人のエコでスマートな行動につなげていきます。
参照)https://fujisawasst.com/JP/
千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」
柏の葉スマートシティは、千葉県柏市にある持続可能な都市づくりを目指したスマートシティプロジェクトです。三井不動産と柏市が中心となり、環境・健康・創造の3つのテーマを基に都市開発が行われています。
エリア全体でエネルギーを効率よく利用するために、太陽光発電や蓄電池を活用し、災害時には地域にエネルギー供給ができる体制を整えており、地域住民の健康維持・増進を目的に、ウォーキングイベントや健康チェックなど、生活の質を向上させる取り組みが行われています。
また、大学や研究機関、企業が集まるイノベーション拠点として、スタートアップ支援や研究開発が活発に行われています。
参照)https://www.kashiwanoha-smartcity.com/
静岡県裾野市「Woven City」
Woven Cityは、トヨタが静岡県裾野市で建設中の実験都市です。AI、ロボティクス、IoT、自動運転などの最新技術を活用して、未来のスマートシティを創造することを目指しています。2020年に発表され、2021年に着工しました。
道路は3種類に分かれており、自動運転車専用道路、パーソナルモビリティと歩行者が共存する道路、歩行者専用道路がそれぞれ用意されており、太陽光発電や水素エネルギーを活用し、クリーンエネルギーでの運営を目指しています。
住民の生活にロボットやAIが組み込まれ、健康管理や家事支援、移動サポートなどが提供されます。
参照)https://www.woven-city.global/jpn/
鳥取県 メタバース交流スペース「バーチャルとっとり」
鳥取県は、自治体初の「メタバース課」を設立し、2024年3月にメタバース上の交流スペース「バーチャルとっとり」をオープンしました。スマートフォンから簡単にアクセスでき、鳥取砂丘や大山などの仮想空間で、県内外の若者同士の交流や観光情報の発信を行っています。これにより、関係人口の創出や地域活性化を図っています。
参照)https://www.pref.tottori.lg.jp/313326.htm
個人での取り組み
スマートシティの実現に向けて、個人でできることがあります。今すぐ取り組める2つの方法について紹介します。
エネルギーの見直し
こまめな消灯や節電、エネルギー効率の高い家電の使用など、日常生活で省エネを意識することで、全体のエネルギー消費削減に貢献できます。可能であれば、自宅で太陽光発電などを導入したり、再生可能エネルギー由来の電力を選ぶことで、脱炭素社会に貢献できます。
スマートデバイスの活用
スマート家電やエネルギー管理アプリで電力使用量を可視化し、必要に応じて調整することでエネルギー効率が向上します。また、IoT機器を活用してエネルギーの管理や防犯を強化することで、自宅をスマートな環境に整えることができます。
移動手段の選択
できるだけ公共交通機関、自転車、電動スクーターなどを利用することで、CO₂排出量の削減に貢献できます。車を利用する場合でも、カープール(相乗り)や電気自動車の利用が効果的です。
また、短距離は徒歩や自転車で移動し、カーシェア、自転車シェアなどのシェアリングサービスを活用することで、交通渋滞や排気ガスの削減につながります。
デジタルリテラシーの向上
スマートシティではデジタルツールが多く活用されるため、スマホアプリやオンラインサービスを使いこなせると便利です。リテラシーを高めることで、新しい技術に対する理解が深まり、地域のスマートシティ推進にも役立ちます。
まとめ
今回は脱炭素社会を実現するスマートシティについてわかりやすく解説しました。現在、国だけでなく地域や地元企業が連携して、環境に配慮したまちづくりを行っています。地域に合った計画を立て、住民が安心して暮らせるのがスマートシティのゴールです。
国や地方自治体、企業だけでなく、個人でもスマートシティの実現に向けて取り組むことができます。今回紹介した内容を参考に、エネルギーの見直しなど個人でできることを少しずつ始めてみませんか。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。