地方創生という言葉を聞いたことはありますか?聞いたことがあっても詳しい内容は分からない、という人は多いのではないでしょうか。今回の記事では、地方創生の概要と国の施策、地方創生を可能にする脱炭素への取り組みについて紹介していきます。
地方創生とは
地方創生とは、地方の活性化への取り組みや事業のことを指します。首都圏への人口集中などの問題を解決し、日本全国の各地方で住みやすい環境を確保し、活力のある国の実現と維持が最終的なゴールです。
2014年に「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、内閣が設置した法廷組織となりました。現在は2025年までの目標や施策の方向性を取りまとめた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定されています。
地方創生の課題
地方創生の実現にはいくつかの課題がありますが、中でも大きな問題は「地方の人口減少」と「地方の高齢化」の2点です。日本では年々出生率が低下しています。さらに若い世代の人口が都市に流出していることも相まって、地方の労働人口は減り、住民の高齢化が目立っています。地方の人口減少と高齢化を解決するために、国は4つの基本目標と2つの横断的な目標を制定しています。
4つの基本方針
稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする
地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる
結婚・出産・子育ての希望をかなえる
ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域を作る
2つの目標
多様な人材の活躍を推進する
新しい時代の流れを力にする
引用元:環境省『まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」「基本方針」』
上記の解決方法の他に「地域脱炭素ロードマップ」を用いた脱炭素社会の実現計画も、地方創生の問題点を解決する方法の1つです。
地域脱炭素ロードマップとは?
脱炭素社会の実現に向けて作られた「地域脱炭素ロードマップ」について解説します。
概要
国は、2050年までに脱炭素社会を実現するために、2021年6月に地域脱炭素ロードマップを作成しました。
脱炭素社会とは、温室効果ガスの排出量ゼロを目指す社会のことです。現在、地球規模の気象災害が各地で起こっています。地域脱炭素ロードマップは、気象災害の原因である温室効果ガスの排出量を削減し、持続可能な経済社会を作ることを目的としています。
地域脱炭素ロードマップは地域課題を解決し、地域の魅力と質を向上させるための取り組みです。国と地方の両方がよりよい地域づくりの実現に向けて努力することで、地方創生の未来が叶います。
重点対策
地域脱炭素ロードマップの中では、脱炭素社会の実現に向けて基盤となる8つの重点対策が制定されています。
8つの重点対策
屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
地域共生・地域裨益型再エネの立地
公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
住宅・建築物の省エネ性能等の向上
ゼロカーボン・ドライブ
資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
コンパクト・プラス・ネットワークなどによる脱炭素型まちづくり
食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立
引用元:環境省「地域脱炭素ロードマップ【概要】」2021年6月9日 p.9
2022年4月、日本では26箇所の脱炭素先行地域が決定しました。地域脱炭素ロードマップを基に、それぞれの地域が脱炭素化社会に向けた取り組みを提案・実施しています。国は2025年までを集中期間として、地域を積極的に支援する施策を打ち出しています。
脱炭素社会の取り組みを紹介
脱炭素社会に向けて、国や地域は実際にどのような取り組みを進めているのでしょうか。脱炭素化に向けた代表的な取り組みは、太陽光発電と再生可能エネルギーの利用です。それぞれの具体例を交えて解説していきます。
太陽光発電を導入
建物の屋根などに自家消費型の太陽光発電設備を導入しています。太陽光発電は環境負荷が少なく、電力も安くなっているのが特徴。太陽光発電で余剰のエネルギーが発生すれば、地域内での有効活用も可能です。
宮城県東松島市では、東日本大震災時の防災集団移転原地を利用した太陽光発電の導入を計画しました。東松島市の全民生需要家の脱炭素化に向けて取り組んでいます。
再生可能エネルギー
再生可能エネルギーとは、石油・石炭・天然ガスなどの化石エネルギーではなく、太陽光・風力・地熱などの自然界に存在するエネルギーのことです。資源が枯渇せずに何度も利用できて温室効果ガスも排出しないので、脱炭素社会において重要なエネルギー源となっています。
神奈川県横浜市では、すでに稼働しているごみ発電や風力発電を活用しています。さらに再生可能エネルギー導入地域を拡大し、脱炭素化を目指す計画です。食品ロスやペットボトルの削減と活用にも力を入れており、バイオマス発電やペットボトルの再利用を行っています。
個人でもできる脱炭素への取り組み
日本の温室効果ガス排出量の6割は、家庭での消費が占めています。私たちが個人でもできる脱炭素への取り組みは、日常生活で省エネを意識・日常生活でエネルギーを見直し・使用設備や製品の見直しの主に3つです。具体例を交えて紹介します。
日常生活で省エネを意識
日常生活の中で省エネを意識してみましょう。エアコンを使用する際にドアや窓の開閉を少なくすることや、カーテンを閉めることも効果があります。冷房、暖房のどちらを使用する時も、扇風機の併用がおすすめです。部屋の中の空気を循環させると、部屋の温度が均一に保たれます。エアコンをつける時の設定温度の目安は、冷房時は28度、暖房時は20度です。
洗濯をする際は、風呂の残り湯を再利用すると水の節約になります。また、少量の洗濯物を毎日洗うより、まとめ洗い、まとめ乾燥で回数を減らすと省エネにつながります。日々の小さな積み重ねが大切です。
日常生活でエネルギーを見直し
日常生活で使用しているエネルギーの見直しも効果的です。たとえば再エネルギー電気への切り替えを行い、温室効果ガス排出量が少ない電力会社のプランを選ぶ方法があります。自宅には太陽光発電設備の設置ができない場合も、地球に優しいエネルギーを使用できます。電力会社を変更しても停電のリスクが高まることはないので、安心してください。省エネモードが搭載されている家電を省エネモードで使用するのも、立派なエネルギーの見直しです。
使用設備や製品の見直し
住居の設備や使用している製品を見直すことも、脱炭素化への大切な一歩です。たとえば、部屋の電球をLEDランプに取り替えるだけで省エネになります。テレビやエアコン、冷蔵庫も近年のエネルギー消費家電は電力消費が大幅に効率アップしています。家電製品を買い替える際は、省エネ型の商品を選択しましょう。
住宅の建築やリフォームを行う際は、省エネ住宅を検討してみませんか。既存の窓の内側にもう1枚内窓を設置する「二重窓」は、住宅の断熱・遮熱効果を高めます。遮熱効果は、窓の外に庇や日除けテントを貼るだけでも効果があるので、実行しやすい方法です。
まとめ
今回は、地方創生の概要と、地方創生を可能にする脱炭素への取り組みについて紹介しました。脱炭素化を目指す地域脱炭素ロードマップに従って取り組みを進めると、環境に配慮した住みやすい地域が実現します。現在は人口減少や高齢化に悩んでいる地域が活性化し、国の掲げる地方創生へとつながっていくのです。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。