脱炭素化への取り組みに必要なネットゼロとは?

脱炭素化への取り組みに必要なネットゼロとは?

2050年までに世界中で脱炭素社会を目指している今、ネットゼロという言葉を聞く機会も多くなりました。この記事では、主に建築業界の省エネ、再エネでよく使われるネットゼロについて詳しく解説します。また、ネットゼロに向けて国内外が行っている取り組みについても紹介していきます。

 

脱炭素って何?

脱炭素の概要

脱炭素とは、温室効果ガスの排出量をゼロにすることです。脱炭素は温室効果ガスをまったく出さないようにする取り組みではありません。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と、森林管理などで吸収される温室効果ガスの合計をゼロにする取り組みのことです。

将来の脱炭素社会

現在、世界中で120以上の国と地域が2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量をゼロにする「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。日本政府は2020年10月、日本でも2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。国は2025年までの5年間を集中期間として政策を総動員し、脱炭素社会の実現に向けて取り組んでいます。

脱炭素社会が実現すると、再生可能エネルギーを導入した地球環境にやさしいエネルギー利用が進みます。地域の特性を活かした脱炭素化への取り組みにより、地方でも働きやすく住みやすい環境に変化します。

 

ネットゼロについて解説!

ここからは、ネットゼロとは何か、またネットゼロの関連用語について解説します。

概要

ネットゼロとは、温室効果ガスの排出が正味ゼロという定義で使われている言葉です。ネット(net)とは正味という意味です。温室効果ガスとは、二酸化炭素以外にもメタンなど地球環境に影響を与える全ての排出ガスを含みます。

温室効果ガスの排出量と、森林からの吸収量などを差し引いて合計がゼロになる状態を指します。

関連用語について

ネットゼロという言葉は、建築業界でよく使われます。ここでは、ZEB(ネットゼロエネルギービル)とZEH(ネットゼロエネルギーハウス)という用語について解説します。

ZEB(ネットゼロエネルギービル)とは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間のエネルギー収支ゼロを目指す建物のことです。ZEBの取り組みは、省エネと創エネによってエネルギー消費量を正味ゼロにすることです。省エネでは、高効率空調の利用や昼間は電気をつけずに過ごすなどの工夫でエネルギー利用量を削減します。創エネでは、太陽光発電・バイオマス発電などでエネルギーを作ります。

ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)とは、ZEBと同様にエネルギーの収支ゼロを目指す住宅のことです。ZEHは家全体の遮熱性や設備を効率化して、快適な室内環境を保ちながら省エネルギーに取り組みます。日本では、2030年までに新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を設置する目標を立てています。

 

カーボンニュートラルとの違い

ネットゼロと同じ意味で、カーボンニュートラルという言葉が使われています。ネットゼロとカーボンニュートラルにはどんな違いがあるのか説明します。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガス排出量の算定・削減をすることです。また、温室効果ガスの排出量削減へ努力を行った上で、どうしても排出される温室効果ガスは他の温室効果ガス削減活動をすることで埋める「カーボンオフセット」を行います。温室効果ガスの削減とカーボンオフセットの両方に取り組み、温室効果ガス排出量を正味ゼロにすることを、カーボンニュートラルと呼んでいます。

ネットゼロとカーボンニュートラルの最終的な目標は同じなので、厳密に使い分ける必要はありません。

 

2050年ネットゼロが目標

世界中で2050年ネットゼロに向けて取り組みが進んでいます。2050年ネットゼロの目標が設定されたパリ協定について、国内外の取り組みについて紹介します。

目標を推進するパリ協定

2015年に気候変動問題の解決に向けてパリ協定が採択されました。パリ協定では世界共通の長期目標として、平均気温上昇を産業革命に比べて2度より低く保つとともに1.5度に抑える努力をすることとしています。そのために2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量の合計をゼロにする目標を達成するように定めています。

国内の取り組み

日本では、パリ協定を受けて2050年までにネットゼロを表明しています。2030年までの目標は、温室効果ガスの排出量を2013年度に比べて46%削減、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていくと宣言しています。

国は、2050年までにネットゼロを達成するために、脱炭素先行地域を選定しました。脱炭素先行地域は、地域特性に応じた計画を立案、実行して脱炭素化社会を全国に広げる目的で設定されました。2025年までを集中期間として政策を総動員し、地域を積極的に支援する計画を立てています。

海外の取り組み

海外でも、2050年ネットゼロに向けて取り組みが進んでいます。2050年のネットゼロを表明している国は、アメリカ、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、EU加盟国、イギリス、韓国、メキシコ、南アフリカ共和国などです。2060年までにネットゼロを目指している国は、インドネシア、ロシア、サウジアラビアです。中国は、二酸化炭素排出量を2060年までに正味ゼロにするという目標を立てています。インドは2070年までにネットゼロを目指しています。

 

ネットゼロに向けての事例を紹介

ここからは、ネットゼロに向けて実際に動き出している機関とその取り組みについて紹介します。

グラスゴー金融同盟

グラスゴー金融同盟は、2050年までに温室効果ガス排出量の正味ゼロを目指す金融機関が有志で作った連合です。2021年4月に発足しました。グラスゴー金融同盟の加盟期間数は、2021年12月時点で450以上となっています。日本からもメガバンクや生命保険会社が参画しています。

グラスゴー金融同盟に加盟した機関は、2030年の中間地点で温室効果ガスの排出削減目標を設定する必要があります。企業の温室効果ガス削減に向けた取り組みを支援することで、脱炭素社会の実現を目指します。

Race・to・Zero

2050年までに国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が、ネットゼロを目指す国際キャンペーンです。2021年11月開催のCOP26に向けたキャンペーンとして、2020年6月5日の「世界環境デー」に開始されました。COP26以降もキャンペーンは継続しています。

Race・to・Zeroは、パリ協定の実現に向けた非国家アクター(民間企業、自治体、大学など)の自主的な取り組みを促進しています。参加要件は2050年までのゼロカーボンを表明すること、参加後はすぐに脱炭素化に向けた取り組みに向けて行動を起こすことです。

Getting to Zero Coalition

Getting to Zero Coalitionは、2019年9月に国連気候行動サミットで設立された企業同盟です。海運の脱炭素化実現に向けて、開示、エネルギー、インフラ、金融などの幅広い分野から150社以上の企業や団体が参加しています。2030年までにゼロエミッション燃料の外航運航を実現させるため、ゼロエミッション燃料を開発、普及や市場の確立に取り組んでいます。

 

まとめ

今回は、脱炭素化への取り組みに必要なネットゼロについて説明しました。日本でも2050年ネットゼロに向けて取り組みを開始しました。国外のさまざまな地域でもネットゼロに向けて動き出しており、国や業界をまたいでネットゼロを目指して取り組む団体も増えています。ネットゼロへの動きは、これからますます加速していきます。ビルや住宅など、私たちの身近なところでもネットゼロへの取り組みは進んでいるのです。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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