自治体がカーボンニュートラル実現に向けて取り組む主な分野とは
企業の取り組みばかりが注目されやすいカーボンニュートラルですが、自治体も負けず劣らず努力しています。自治体が取り組む主な分野は、住宅・交通網・公共施設・生活インフラなどです。それぞれの分野について簡単に紹介します。
住宅
住宅は基本的にすべての住民が対象者なので、自治体はカーボンニュートラルの実現に向けて積極的に支援する必要があります。住宅の断熱性・省エネ・再エネ・高効率な設備機器の導入など、住宅にはできることがたくさんあります。昨今特に注目を浴びているのは、aiなどのデジタル技術を最適に運用して脱炭素化を実現することです。快適性はもちろん防災対策にも配慮した住宅への転換を、自治体が後押ししています。
交通網
再エネが電源となるEVカーの購入支援、環境負荷の低い交通網の整備、自転車インフラの整備、新モビリティの導入など、自治体が街づくりを進める上で交通網の整備は欠かせません。これまではCO2排出量が多かったため環境に大きな負荷をかけてきましたので、自治体が交通網を抜本的に見直して変革を図る必要があります。
また、脱炭素の地域交通網を整備することは、街に人を呼び込むアピールにもなります。地域住民に対して新モビリティの利用を促進することも自治体の役割です。
公共施設
建築されてから数十年経過していて老朽化が進む古い公共施設は、省創蓄エネ設備を導入した新しい公共施設に生まれ変わらせる必要があります。自治体が管理する公共施設は、災害に見舞われた時は防災拠点になります。災害時でもスムーズにエネルギーを供給できるように、公共施設を新しくしなければいけません。公共施設周辺の建物とともに、まとめて脱炭素化を進めるのが効率的です。
生活インフラ
自治体は上下水道やごみ処理などの生活インフラを管理する立場にあるので、それらの高効率化や再エネの導入は優先的に検討する必要があります。エネルギーを地域内で上手く循環させるのが理想的です。そのためには施設の統合あるいは分散など、まずは管理体系の整備から着手することが求められます。
ゼロカーボンシティについて
国内で450弱の自治体がゼロカーボンシティを宣言していることからもわかる通り、CO2排出量実質ゼロに向けて前向きに取り組もうとしています。ゼロカーボンシティとは何なのか、利点や事例をまじえて紹介します。
ゼロカーボンシティとは
ゼロカーボンシティとは、CO2排出量実質ゼロを目標に掲げた自治体を指す言葉です。カーボンニュートラルは世界の共通認識ですが、それにならって国内の自治体も、カーボンニュートラルを強く意識するようになっています。
環境省がサポート
ゼロカーボンシティは、環境省がサポートしています。具体的なサポート内容は、温室効果ガス排出量の可視化・実現に向けたプランニングの検討・地域の合意形成の三本柱です。どれもゼロカーボンシティ実現には欠かせません。環境省からの献身的なサポートを受けながら、自治体は一歩ずつ前に進もうとしています。
ゼロカーボンシティの利点
もしも数多くの自治体がゼロカーボンシティを実現すれば、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献するのは間違いありません。日本の環境問題への意識の高さと改善に向けた行動力は、国際的に高く評価されるでしょう。
国際的に高く評価されること以外にも、いくつか利点はあります。たとえば地域の活性化、新しい産業と雇用の創出、災害対応力の強化なども、ゼロカーボンシティの利点です。自治体はさまざまな利点を見込めるので、取り組むことの意味は非常に大きいです。
ゼロカーボンシティの事例
すでにゼロカーボンシティに向けた取り組みは各地で広がっているので、いくつかの自治体の事例を紹介します。紹介するのは、札幌市・鹿角市・所沢市・西東京市・関市です。どれもゼロカーボンシティの参考になる事例です。
北海道札幌市
日本の最北端に位置する北海道は、強烈な寒さに見舞われることで有名です。寒さをしのぐために暖房を惜しみなく使うため、各家庭から出るCO2排出量は全国的にみても多いです。そこで札幌市は、札幌版次世代住宅基準を策定しました。高断熱および高気密住宅を基準とし、もしも基準を満たしていれば住宅の建築費用が一部補助される仕組みです。国が定めるルールでは物足りないため、独自の基準が策定されました。北海道の厳しい気候に適応した住宅の建築を促し、CO2排出量の大幅な削減を目指しています。
秋田県鹿角市
鹿角市はCO2排出量約25万トンの削減に向け、同市に本社を置く再エネ電力会社の「かづのパワー」を有効的に活用する方針を打ち出しています。地域の再エネを拡大し、CO2排出量を削減するのが目的です。
他にも植樹・省エネ・フードロス削減などにも力を入れることで、カーボンニュートラルの実現を目指しています。
埼玉県所沢市
所沢市は独自の電力供給網を整備するため、2018年5月に「ところざわ未来電力」を設立しました。火力や原子力に依存しない、環境負荷の少ないエネルギーによる発電と供給が同電力の目的です。すでに発電された電力が市内の公共施設に供給されているほか、一般家庭への普及も少しずつ進んでいます。
東京都西東京市
西東京市は次世代の子どもたちが暮らしやすい環境を残すために、ゼロカーボンシティを宣言しました。公共施設への再エネ電力の供給・財源確保のための基金の創設・環境チャレンジと環境アワードの創設・環境教育講座の開設を、具体的な取り組みとして掲げています。誰もが環境への意識を高く持てる街づくりを目指しています。
岐阜県関市
ゼロカーボンシティを宣言してカーボンニュートラルを目指す岐阜県関市は、さまざまな取り組みを発表しています。令和4年度の予定は、照明設備のLED化・森林保全・脱炭素の啓発活動・森のエネルギー活用促進事業などです。カーボンニュートラルを目指し、さまざまな角度からアプローチしようとしています。
カーボンニュートラルと地方自治体が抱える課題
カーボンニュートラルを実現するにあたって、地方自治体は課題を抱えています。地方自治体同士の連携の必要性、テクノロジーの問題、経済とのバランス、企業や住民への周知などの課題です。どのような課題なのかを見ていきましょう。
地方自治体同士の連携は必要か
カーボンニュートラルのために再エネを取り合うのは好ましくないため、地方自治体同士の柔軟な連携が必要な局面もあります。カーボンニュートラルは、国全体で取り組むテーマです。
テクノロジーの進歩が必要
省エネおよび再エネの導入は必須ですが、そのためにはテクノロジーの進歩が必要不可欠です。自治体は新しいテクノロジーに関する情報を随時収集し、いち早く手を打つことが大切です。
経済とのバランス
カーボンニュートラルと経済成長は、バランス良く同時に取り組む必要があります。どちらか一方だけに偏ってしまうのは避けなければなりません。CO2の減少とともに経済も縮小したのでは住民の生活が豊かにならないので、絶妙なバランスの政策が求められます。
企業や住民への広報活動
いくら自治体が鼻息を荒くしてカーボンニュートラルに取り組んでも、企業や住民の関心が薄いと実現できません。自治体は企業や住民にカーボンニュートラルを周知させるための広報活動を定期的に実施し、取り組みを広める必要があります。
まとめ
自治体が総力を挙げて取り組んでいる、カーボンニュートラルの事例や課題について紹介しました。鹿角市や所沢市は再エネ電力の供給に力を入れていますし、西東京市や関市は具体的な取り組みを次々と発表して行動に移しています。また、札幌市は寒冷地ならではの札幌版次世代住宅基準を策定し、独自の政策で達成を目指しています。
カーボンニュートラルの実現を目指す自治体は、経済とのバランスや企業や住民への周知などいくつかの課題も抱えています。それらの課題と真正面から向き合い、1つ1つ乗り越えようとしています。ですので自治体で活動する企業や住民は、できる限り積極的に関わっていきましょう。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。