カーボンニュートラル実現へ!日本の産業の課題と取り組みについて解説!

カーボンニュートラル実現へ!日本の産業の課題と取り組みについて解説!

2050年カーボンニュートラル宣言とは

2020年に菅元首相は、所信表明にて2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言しました。この宣言以降、カーボンニュートラルという言葉が頻繁にいわれるようになっています。

カーボンニュートラルは環境用語で、ライフサイクル全体のCO2排出量を実質ゼロにすることを意味します。たとえCO2が排出されても、植物が成長する過程でCO2を吸収してくれます。CO2排出量と吸収量がニュートラルな状態になればCO2は増加しません。CO2による地球温暖化で環境が乱れている状況なので、カーボンニュートラルの実現は非常に大切です。

カーボンニュートラルの取り組みはさまざまです。CO2排出量を抑えるために再生可能エネルギーを導入したり、CO2吸収量を増やすために植林をおこなったりなどです。これらの活動を続ければ、CO2排出量は相殺されやすくなります。特に日本でカーボンニュートラルといえば、CO2排出量相殺の意味合いが強いです。

CO2排出量をゼロにすれば話は早いですが、現代社会でそれはあまりにも難しいことです。そのため排出量を吸収量で相殺する考え方が、世間では徐々に浸透し始めています。

 

カーボンニュートラルが求められる理由

政府が大々的な宣言を出してまでカーボンニュートラルに取り組むのには、もちろん理由があります。カーボンニュートラルの背景には、年々深刻化する地球温暖化と2015年に採択されたパリ協定があります。

産業革命を皮切りに、地球の平均気温は上昇しています。平均気温が上昇しても問題がなければ対策の必要はありませんが、そう都合よくはいきません。世界各地で地球温暖化による悪影響が出ています。氷山が溶けて海面が上昇したりサイクロンが発生したりなど、地球の環境が明らかに悪い方向へと変わっています。日本でも豪雨・豪雪・酷暑などの異常気象が発生し、多くの尊い命が失われている状況です。

この状況を変えるために、是が非でもカーボンニュートラルを実現させなければいけません。世界中でカーボンニュートラルへの取り組みが加速しているのは、異常気象による悲惨な被害が出ているからです。世界各国がパリ協定を基準にした地球温暖化対策の目標を定め、達成に向けて全力を挙げています。

 

カーボンニュートラルへ日本産業の課題

カーボンニュートラルの実現に向け、日本の産業はどのような課題を抱えているのでしょうか。この項目では鉄鋼業・化学・パルプ・セメントに的を絞り、それぞれの課題について明らかにします。

鉄鋼業

産業部門のCO2排出量のうち約50%を占めているのが、鉄鋼製品を製造する鉄鋼業です。なぜそれほどまでのCO2排出量を占めるのかといえば、高炉で鉄鋼を生産する際にたくさんのCO2が発生するからです。多くの場合、石炭の還元反応から鉄鋼を精製します。その過程においてCO2の排出は避けられません。

CO2がたくさん排出されてしまう原因は石炭なので、石炭に代わって水素を使用する水素還元製鉄などの技術開発および研究が進められています。この方法が一般的になれば、鉄鋼業のCO2排出量の大幅な削減も夢ではありません。さらなる技術開発および研究に期待が寄せられています。

化学

主原料のナフサを高温で分解してエチレンおよびプロピレンといった基礎化学品を製造していますが、熱エネルギーを得る際に化石燃料を使用しています。このため燃焼の際に少なくないCO2が排出されています。

化学のカーボンニュートラルで欠かせないのが、CO2を資源として扱うカーボンリサイクルの考え方です。排出されたCO2を効率的に回収し、水素を使用した人工光合成などの技術を駆使したカーボンリサイクルなら、CO2排出量の削減が可能です。

パルプ

紙は木材チップや古紙などからできていますが、製造過程でどうしても熱エネルギーを必要とします。この過程を電化できれば再生可能エネルギーによる電力を使用することでCO2排出量を削減できますが、現時点で電化は現実的ではないとされています。そのため省エネ化とバイオ燃料の有効活用などで、カーボンニュートラルを目指しているのが現状です。

また、紙の製造に関わるすべての過程でCO2排出量を削減しようとするなど、ライフサイクル全体での削減に力を入れています。

セメント

セメントは石灰石を燃焼させる過程で、たくさんのCO2が排出されています。石灰石の主成分は炭酸カルシウムで、これを燃焼すると中間製品のクリンカができます。クリンカに石膏などを添加してセメントが完成します。

セメントの場合は焼成でも化学反応でもCO2が排出されてしまうため、いかにこれらのCO2をまんべんなく回収できるかがカーボンニュートラルのポイントです。CO2を回収するための技術開発が必要不可欠ですし、開発できたら幅広く浸透させなければなりません。カーボンニュートラルを目指して前向きに取り組んでいます。

 

カーボンニュートラルへ日本の取り組み

日本はカーボンニュートラルの実現に向けて積極的に取り組んでいます。洋上風力産業・水素産業・蓄電池産業について紹介します。いったいどんな取り組みなのかを、それぞれ見ていきましょう。

洋上風力産業

日本の洋上風力産業はまだ発展途上の段階です。2020年末の時点で風力発電全体の数パーセントしか占めていない状況なので、産業が発展しているとはお世辞にもいえません。海外が日本の何百倍もの電力を発電していることからも、日本の洋上風力産業がいかに遅れているかわかります。

日本は四方を海に囲まれている島国なので、洋上風力産業にはもちろん力を入れようとしています。2030年から40年にかけては30GWから40GWほどの電力を発電できるように、設備の充実を図っていく見通しです。

洋上で発電した電力をどのように地上に届けるかが、洋上風力産業の大きな課題です。他にも設置に不向きな地形があるなど課題は少なくありません。発展を目指して全力で取り組んでいます。

水素産業

水素自動車や水素精製など、水素はカーボンニュートラル実現に向けてカギとなるエネルギーです。CO2フリーの貴重なエネルギーなので、水素を有効活用できるようになれば、日本はエネルギー調達および供給のリスクを低下させられます。

日本の水素産業が目指すのは、水素の製造・運搬・貯蔵・使用をスムーズに無駄なくおこなうことです。これらがすべてできれば、世界に先駆けて日本がリードできます。

水素産業はまだ未知数の部分が多いため、産業が簡単には発展しません。試行錯誤を繰り返しながら徐々に発展していくしかありませんので、実用化されて浸透するまでは長い時間を要します。水素産業の発展を目指し、多くの人が努力を重ねています。

蓄電池産業

蓄電池産業が今よりもさらに発展するように、経産省が財政支援する姿勢を見せています。2030年までに、蓄電池の生産能力を10倍に引き上げるのが目的です。最先端技術の詰まった新しい電池工場の建設や、資源の安定的な確保のために資金が投じられる見込みです。

今後さらなる電気自動車の普及や再生可能エネルギーが導入される予定ですが、これらの普及や導入には蓄電池の存在が欠かせません。十分な量の蓄電池が製造できれば、それだけエネルギー効率は良くなります。蓄電池を製造する部分だけ支援しても上手くいかないので、サプライチェーンを安定的に確保するために巨額の資金が投じられます。蓄電池産業のさらなる発展を目指し、国が強力な資金援助をおこなおうとしています。

 

まとめ

カーボンニュートラルの実現に向けた日本のさまざまな取り組みと、各産業の課題について解説しました。洋上風力・水素・蓄電池といったさまざまな産業が発展しようとしていますが、その一方で課題も抱えています。鉄鋼業・化学・パルプ・セメント業界は、それぞれに独自の課題があります。その課題を解決するために、新しい技術開発が進んでいます。2050年のカーボンニュートラル宣言を受けて、日本の多くの人が力を尽くしています。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

脱炭素・カーボンニュートラルカテゴリの最新記事