製造業とカーボンニュートラルについて
全産業の中でも製造業はCO2の排出割合が約25%を占めているため、カーボンニュートラルを特に強く求められている産業です。製品を製造する時はもちろんですが、消費者の手に渡った後も環境負荷を与えてしまう可能性があります。特に生産時にはどうしても大量のエネルギーを消費するので、温室効果ガスの発生による大気汚染や水質汚染が問題視されています。
製品を製造する工場では電力を大量に消費しますが、その内訳を占めるのはやはり生産設備です。そのため製造業がカーボンニュートラルを実現するためには、CO2を排出しない発電システムと生産設備の省エネ化が重要なポイントです。たとえば電力を再エネに切り替えたり最新の省エネ生産設備に買い替えるのは、非常に有効的なカーボンニュートラルへの取り組みです。
電力を再エネに切り替えたり最新の省エネ設備に買い替えるのはコストがかかるので、製造業のカーボンニュートラルは簡単ではありません。ただ、少しずつでも構わないので何かしらのアクションを起こすことが、製造業のカーボンニュートラル実現への道です。
カーボンニュートラル実現に向けた製造工場のPDCAとは
カーボンニュートラル実現に向けた、製造工場の理想的なPDCAを紹介します。PDCAの4つのサイクルを何回も繰り返すことで、カーボンニュートラルが実現しやすくなります。製造工場への導入が推奨されているとても効果的なシステムです。
現状の把握と計画の立案
焦っていきなり実行に移しても失敗してしまうので、まず製造工場の現状の把握と計画の立案から始める必要があります。いったいどこで最も多くエネルギーが消費されているのか、場所や工程ごとに隅々までチェックします。その中に省エネできる項目があれば、省エネに切り替える計画を積極的に立案しましょう。
計画を立案する際は、メリット・デメリットを加味して経営的に可能かどうかを十分検討することが大切です。工場内でしっかりと論議を重ねて、何を実施するか具体的に決定します。
計画をもとに実施
計画を立案し終わったら、その計画をもとに実施します。どうなったらゴールなのかを明らかにするため、あらかじめ基準値を設定しておくと迷いません。実施前にきちんと体制を整えておき、進捗状況を細かく管理するのが理想的です。
設備や運用体制の検証
一通り実施したら、次は設備や運用体制の検証に入ります。エネルギーの消費量を測定して効果を検証しましょう。設備の運転状況ごとにどう変化したのか、逐一データを収集して誰でもわかるように可視化することが大切です。
計画を再検討
もしも事前に立てた目標を達成できなかった場合は、達成できるように計画を再検討します。目標とどのぐらい差があったのか、新しく導入した設備の効果はどれほどだったのかを、客観的に認識して改善することが大切です。
また、現場で作業するスタッフの声に耳を傾け、省エネ対策を新しく追加することも効果的です。このPDCAを何回も繰り返すことで、環境負荷を最小限に抑えた理想的な製造工場に生まれ変われます。
製造業のカーボンニュートラル実現に役立つ指標やシステム
EnpIとFEMSは、製造業のカーボンニュートラル実現に役立つ指標とシステムです。製造業の指標化と問題点の抽出に効果的です。いったいどんなシステムなのかを、できる限りわかりやすく解説します。
EnpI
EnpIはエネルギー性能指標のことで、エネルギー性能を測定するための尺度の役割を果たします。エネルギー性能にはエネルギー使用量やエネルギー効率などが関係していて、それらの測定結果によって変わります。たとえばピーク電力・用途別の使用量・各種エネルギー効率などが該当します。EnpIは製造工場内の立場ごとに使い分けるのが一般的です。
たとえば工場の製造部門なら、エネルギー使用量の現在と過去を比べます。EnpIを導入すれば、エネルギーのさまざまな情報をそれぞれの立場ごとにチェックできます。
FEMS
FEMSは工場管理システムで、受配電設備、生産設備、機器などを管理するのに役立ちます。導入すれば設備が無駄なエネルギーを消費していた場合すぐにわかります。その結果を参考にすれば、エネルギーを効率的にコントロールできます。
しかもFEMSは、数値やグラフによって状況の可視化が可能です。そのため既存設備がどのような状況で稼働しているのかを余すところなく把握できますし、どこを省エネ設備に切り替えれば良いのかを検討する時に役立ちます。製造業のカーボンニュートラル実現をサポートする、とても実用的なシステムだといえるでしょう。
再生可能エネルギー導入のためのシステム
再生可能エネルギーを導入するための鍵となる、太陽光発電システムと蓄電池システムについて紹介します。どちらもカーボンニュートラルの実現に向けて必要不可欠なシステムなので、しっかりと理解しておきましょう。
太陽光発電システム
発電のために太陽光を有効活用する太陽光発電システムは、CO2削減効果が大きいため以前から注目を集めています。しかも、長期間に渡って安定的な効果を見込める点も大きなメリットです。
他の再生可能エネルギーと比較して初期投資金額が手頃なこともあり、導入を進める企業や家庭は少なくありません。カーボンニュートラルの実現に向け、今後も導入の拡大が期待されているシステムです。
蓄電池システム
さまざまな発電システムの陰に隠れてしまいがちですが、蓄電池システムはエネルギー問題を解決するのに欠かせないシステムです。再エネ設備のフル活用、非常用電源の確保、ピークカットなど、電力利用の随所に活躍の機会があります。太陽光発電システムの普及にともない、蓄電池システムへの需要も高まっています。今後のさらなる進歩が望まれています。
ガス会社のカーボンニュートラルへの取り組み
最後に紹介するのは、ガス会社のカーボンニュートラル実現への取り組みについてです。顧客の脱炭素化、カーボンリサイクルシステム、ガスの脱炭素化に、ガス会社がチャレンジしています。その取り組みの一部を紹介します。
顧客の脱炭素化を図る
産業集積地帯で使われているガスを、環境に配慮した都市ガスに転換します。顧客の脱炭素化が目的で、石炭や石油の多用を抑制できます。特に高温熱での脱炭素化を積極的に進め、従来の燃料からの効率的な転換を図ります。
カーボンリサイクルシステム
カーボンニュートラルの実現に向け、カーボンリサイクルシステムの構築にガス会社が力を入れています。排ガスの分離や回収が可能な設備を整え、液化炭素やドライアイスなどにリサイクルします。
また、今後は大気から直接CO2を回収したりリサイクルで製造できる製品を増やしたりなど、カーボンリサイクルシステムの規模を今よりもさらに拡大していく見通しです。排出されたCO2を有効利用するための画期的なシステムです。
ガスそのものの脱炭素化
ガスを脱炭素化することにも、ガス会社は取り組んでいます。効率的で低コストなガスを積極的に導入することで、環境への負荷を抑制します。さまざまな技術を結集させ、2030年までの実現を目指しています。
また、すでに導入しているカーボンニュートラルLNGやバイオガスの取扱量をさらに増やそうとしていますし、ガス会社はカーボンニュートラルの実現に向け積極的に取り組んでいます。
まとめ
2050年までにカーボンニュートラルを実現させるために、さまざまなシステムが開発されています。記事では製造業を中心に、再生可能エネルギー導入のためのシステムやガス会社の取り組みについて紹介しました。
カーボンニュートラルは決して簡単ではないので、製造業が取り組む場合はPDCAシステムを用いるのが効果的です。また、EnpIやFEMSを有効活用することでも、カーボンニュートラルの実現に近付けます。各業界がさまざまなシステムを導入し、カーボンニュートラルにチャレンジしています。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。