日常生活の中で見聞きする機会が少なくないアスファルトですが、そもそもアスファルトとはいったい何でしょうか。そこで、アスファルトの概要・用途・メリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
アスファルトとは
アスファルトとは、原油に含まれている最重量の炭化水素類を指します。アスファルトには天然と石油の2種類があります。前者は天然の原油が変化したアスファルトで、後者は石油を精製する過程でできたアスファルトです。ただ、国内で天然のアスファルトは採れないので、国内では主に石油アスファルトを指します。アスファルトは暗褐色あるいは黒色で、加熱すると融解しやすいのが特徴です。
アスファルトの用途
アスファルトの代表的な用途といえるのが道路の舗装材です。アスファルトに骨材やフィラーとよ呼ばれる粉末を加えて製造されます。また、水と界面活性剤を加えて乳剤を作り、防水加工する際にも使われます。
また、建物および屋根を防水工事する際の防水材にも用いられます。布や紙にアスファルトを加えて作られたアスファルトフェルトなどが、防水材の役割を果たします。さらに、工業用アスファルトは鉄筋や建材をサビさせない目的で使われるなど、アスファルトの用途はさまざまです。
メリット
道路の舗装材によく使われるアスファルトは、水はけが非常に良いです。もしも水はけが悪かったら雨が降った後に雨水が水たまりと化し、道路環境が悪化してしまいかねません。アスファルトなら水はけが良いので、道路が水浸しになりにくいです。また、アスファルトは柔らかい性質なので、自動車の走行音をおさえてくれるのもメリットです。駐車場などの騒音対策に効果的です。
アスファルトは施工時にもメリットがあります。作業効率が優秀で手間にならないため、コストを比較的安く抑えられます。
デメリット
アスファルトは耐熱性が低いため、太陽光を長時間受け続けるとすぐに熱くなってしまいます。真夏のアスファルトをイメージするとわかりやすいかもしれません。夏は路面の温度がすぐ高温になってしまいます。
また、施工しやすい反面寿命がそれほど長くないのも、アスファルトのデメリットです。走行する自動車の重量に耐え切れずへこんでしまうことがよくあるため、数年のサイクルを目途に補修工事を施さないといけません。長持ちはしにくい素材です。
コンクリートとの違い
コンクリートは、アスファルトと混同されやすい素材です。アスファルトとコンクリートには違いがありますので、製造方法・用途・メリット・デメリットについてそれぞれ確認していきましょう。
コンクリートの製造方法
セメント・砂・砂利・水を混ぜ合わせることで、コンクリートを製造できます。コンクリートはそれぞれ強度が異なりますが、それはどう組み合わせるかに大きく左右されます。
コンクリートの用途
強固で少々の衝撃では壊れないコンクリートは、さまざまな使われ方をしています。たとえばビルやマンションなど建造物の主要部分や、川の堤防、海のテトラポットなどです。他にも家の周りを囲うブロック塀や、電信柱の支柱などにもコンクリートが使われています。
コンクリートは収縮および破断しやすい素材ですが、建造物の場合は鉄筋や鉄骨と組み合わせることで弱点をカバーできます。
メリット
まず第一のメリットは衝撃に強く強固な点ですが、それ以外にもさまざまな形にできる点や耐熱性がある点も魅力です。堤防やテトラポットなどがコンクリートでできているのは、災害の予防効果が高いからに他なりません。また、アスファルトとは違い耐熱性も高いので、たとえ夏場でも簡単には温度が上昇しないのも特徴です。
デメリット
コンクリートはしっかりと固まるまでどうしても時間がかかるため、スピード施工は難しいのがデメリットです。固まるまでは強度にも不安があるので、固まるまで長く待つ必要があります。また、コンクリートは揺れに弱いため、コンクリートだけだと地震の影響を受けてしまいやすいです。建造物に使う場合は、十分な対策を講じなければいけません。
アスファルトのカーボンニュートラルの取り組み事例
アスファルトに関連する会社が、カーボンニュートラルに取り組んでいます。紹介するのは、日本道路・日工・前田道路です。いったいどんな取り組みなのかを紹介します。
日本道路
日本道路は道路建設・舗装・土木・施設工事などを手がける会社です。カーボンニュートラルを目指し、中温化アスファルト舗装を実施しています。この舗装はアスファルトの製造および施工時の温度を低下させられるのが特徴です。また、燃料消費量を削減させられることから、低炭素アスファルト舗装ともいわれています。
同社が長年培ってきた中温化技術を駆使することで、重油を使用した場合と比較しておよそ3割ものCO2削減効果を見込めます。他にも製造時のCO2排出量ゼロ化に向け、技術開発に尽力しています。
日工
日工はアスファルトプラントや、防災・復興製品などを製造販売する会社です。カーボンニュートラルの実現に向けて大阪大学と連携し、CO2を排出しないアスファルトプラント用の混焼バーナー開発に取り組んでいます。
日工は経営方針にカーボンニュートラルを取り入れました。その具体的な取り組みとして、CO2を排出しないバーナーの開発に着手したのです。バーナーの燃料はアンモニアですが、アンモニアは燃焼させてもCO2を排出しません。
従来のアスファルト製造は、重油を使って加熱していました。もしもアンモニアが燃料の新バーナーの開発に成功すれば、加熱の工程におけるCO2排出量を5割以上も削減できる見込みです。日工はバイオマスバーナやWELLバーナーといった環境負荷の低いバーナーをすでに開発していますし、カーボンニュートラルの実現を目指して日夜開発を進めています。
前田道路
前田道路は道路整備・土木建設・施設整備・環境など、整備や建設などの事業を多角的に手がける会社です。同社は広島合材工場で、低炭素アスファルト混合物の販売を発表しました。製造時のCO2排出量が従来の5割減の画期的なアスファルトで、燃料の変更や発電方法を再エネに切り替えることで実現しました。サプライチェーンのscope3を大幅に軽減できるため、とても大きな期待を寄せられています。
CCSについて
CCSはカーボンニュートラルを実現するための方法の1つとして期待されています。そこで、CCSとはどんな方法なのか、なぜCCSを実現しなければらないのかを紹介します。
CCSとは
CCSとは地下深くにCO2を閉じ込めてしまう方法のことです。製油所や発電所などから排出されたCO2をまず回収設備まで回収し、いったんCO2を貯蔵します。そのCO2を遮蔽層のさらに下にある地下に送って閉じ込めます。これによりCO2を人の生活圏から完全に隔離してしまうのが目的です。
アスファルトの場合
アスファルトは舗装道路の約95%に用いられているポピュラーな素材ですが、アスファルトの製造時などにCO2が排出されてしまいます。新技術の開発が進んでCO2排出量をゼロにしない限り、カーボンニュートラルの実現は難しくなります。CCSが実現すれば、この問題を解決できる可能性が高まります。
コンクリートの場合
コンクリートは耐久性や耐熱性が高くて機能的に優秀ですが、主原料の石灰石を焼成する過程でCO2が排出されてしまいます。すでにさまざまな建造物などにコンクリートが使用されていますが、まずはこの状況を改善しないとカーボンニュートラルはできません。
CCSは商用化に向け、実証実験が継続的におこなわれています。
まとめ
カーボンニュートラルに深く関係する、アスファルトについて紹介しました。アスファルトは、コンクリートとは違った性質を持っています。水はけがよくて施工コストも安いのが、アスファルトのメリットです。
また、日本道路・日工・前田道路に注目し、アスファルトに関連したカーボンニュートラルの取り組みについても解説しました。各会社がカーボンニュートラルに対する意識を高め、全力で取り組んでいます。さらに、CO2を地中に閉じ込めてしまうCCSの実験も実施されていますし、アスファルト関連のカーボンニュートラルへの取り組みは活発化しています。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。