脱炭素を加速させる国内の取り組み!脱炭素先行地域とは?

脱炭素を加速させる国内の取り組み!脱炭素先行地域とは?

脱炭素とは

脱炭素とは何か、知っていますか?近年、SDGsの概念が世界的に広がっています。それに伴い、脱炭素という言葉を聞く機会も増えました。しかし脱炭素とは何なのか、私たちの生活にどう関係しているのかを知る機会は少ないのではないでしょうか。今回は脱炭素と、脱炭素社会を目指して選定された脱炭素先行地域について解説していきます。

脱炭素の意味

脱炭素とは、温室効果ガスの排出量をゼロにすることです。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と、森林管理などによる吸収量の合計をゼロにすると定義づけられています。
脱炭素を達成するためには、温室効果ガス排出量の削減、吸収量を高めるための森林管理保全、強化の両方が必要です。

脱炭素社会とは

脱炭素社会とは、脱炭素を目指す社会のことです。現在、120以上の国と地域が、2050年までに脱炭素社会を実現するという目標を掲げています。

脱炭素化に向けた取り組みは、私たちが安心して暮らすために必要不可欠です。国内外でさまざまな気象災害が発生しているのは、温室効果ガス排出量増加による気温上昇が原因と言われています。脱炭素社会を目指すことは、将来の世代に豊かな環境を残し、持続可能な経済社会を作ることだといえます。

 

脱炭素先行地域とは

脱炭素先行地域とは、脱炭素社会に向けた日本国内の取り組みを、全国に先駆けて実施する地域のことです。複数の地方自治体が連携して取り組むこともできます。国は年に2回程度、全国各地の市区町村から先行地域の募集を行っています。脱炭素先行地域に選定された地域は、毎年度、環境省に進捗状況を報告しながら計画を実行します。

定義

脱炭素先行地域の定義は、2050年までに脱炭素社会を実現させるために、地域特性に応じた計画を立案・実行して脱炭素への取り組みを全国に広げるモデルとなることです。脱炭素地域は、民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費による二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指します。また、国全体の温室効果ガス排出量の削減に向けて取り組みます。

第1回選定地域を紹介

2022年4月26日、26箇所の第1回選定地域が決定しました。国は2022年1月から2月にかけて選定地域の募集を行い、脱炭素化に向けた計画を提案した地域の中から選定地域を決定しました。第1回選定地域は「地域脱炭素ロードマップ」に従って、脱炭素社会に向けた取り組みを実施します。

 

 

地域脱炭素ロードマップ

脱炭素社会の実現に向けて作成された「地域脱炭素ロードマップ」とはどんなものでしょうか。ここからは、地域脱炭素ロードマップの概要と、8つの重点対策について解説します。

地域脱炭素ロードマップとは

地域脱炭素ロードマップとは、2050年までに脱炭素社会を実現するために、国と地方が共同で展開する行程表のことです。2021年6月9日に決定しました。国は2025年までを集中期間として設定し、政策を総動員して地域を積極的に支援する計画です。100箇所の脱炭素先行地域を選定し、8つの重点対策を全国で実施します。さらに、2030年までに全国で多くの「脱炭素ドミノ」状態を起こすことで、2050年の脱炭素社会実現を目指します。

地域脱炭素ロードマップには、脱炭素社会を目指すと同時に、住民の暮らしの質の向上についても記載されています。農山漁村、離島、都市部などの多様な地域の課題を解決する計画となっています。

8つの重点対策

脱炭素社会の実現に向けて基盤となる8つの重点対策が制定されています。脱炭素先行地域は重点対策をベースに、創意工夫した脱炭素化計画を立案しています。

屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
地域共生・地域裨益型再エネの立地
公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
住宅・建築物の省エネ性能等の向上
ゼロカーボン・ドライブ
資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
コンパクト・プラス・ネットワークなどによる脱炭素型まちづくり
食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立
引用元:環境省「地域脱炭素ロードマップ【概要】」2021年6月9日 p.9

脱炭素先行地域が8つの重点対策を実施できるように、国は積極支援のメカニズムを構築しました。再エネルギーの利用とデジタルインフラの強化(グリーン×デジタルイノベーション)や、社会全体を脱炭素化に向けるルールの改革にも取り組んでいます。

 

先行地域事例を紹介

脱炭素先行地域の範囲は地域によってさまざまです。各地域の地理特性や気候・風土に合わせた計画が立てられています。
第1回選定地域の中から、実際に行われている脱炭素化計画について紹介します。

淡路市

兵庫県淡路市は、コンパクトシティと里山ハイブリッド脱炭素化モデルを提案。市内の施設、休耕地、ため池、住宅屋根などに太陽光発電装置を導入して再エネルギー電気を供給します。夢舞台サスティナブルパーク内の民間施設、明石海峡公園、市営南鵜崎団地などが対象施設・地域です。地域課題となっている放置竹林を活かして、竹ボイラの導入実装にも取り組む計画です。

姫路市

兵庫県姫路市は、世界遺産・国宝の姫路城を中心に「ゼロカーボンキャッスル構想」を提案しました。特別史跡指定区域の公共施設・郊外に太陽光と蓄電池の設備を導入して、再エネルギー供給を行います。文化財保護法の規制がある地域にも、次世代型太陽光発電の導入を検討する予定です。EVバス・EVタクシー・FCVタクシーなどの補充を拡大して、観光地としてのブランド力向上を狙います。

西粟倉村

岡山県西粟倉村は「生きるを楽しむ」をテーマに、村まるごと脱炭素化に向けて取り組んでいます。村全域の公共施設の電力使用量を30%削減するために、太陽光・風力・蓄電池設備を新たに導入。既存の小水力発電・太陽光発電・木質バイオマス発電も引き続き活用してエネルギーマネジメントを行います。また、データプラットフォームでエネルギーを見える化しました。これは村民の温室効果ガス排出量削減への行動変容を促すためです。

秋田市

秋田県秋田市では、秋田臨海処理センターと汚泥再生処理センターの敷地内に太陽光発電・消火ガス発電・風力発電の装置を導入します。蓄電池とエネマシステムで受給制御を行い、再エネルギー電力を供給して脱炭素化に取り組みます。対象施設は秋田臨海処理センターと、同地域内の公共施設です。また、下水道資源・資産を活用して経営改善を図るのも計画の1つ。住民の水道使用料金の軽減を目指しています。

尼崎市

兵庫県尼崎市は、プロ野球チーム「阪神タイガース」のファーム施設の移転先に太陽光と蓄電池の設備を導入します。移転先の大物地域は人口減少が進んでいるので、地方創生を目指します。近隣の大物公園、大物緑地間の電力融通を行い、ごみ発電の余剰電力も活用する予定です。近隣の阪神電車の6駅に太陽光発電装置を導入して、EVバスも導入します。プロ野球の試合では「ゼロカーボンナイター」を開催して相乗効果を図ります。

 

まとめ

2050年までに二酸化炭素排出量ゼロを達成し、脱炭素社会を実現することは世界中の目標となっています。現在、日本では脱炭素社会に向けて26箇所の先行地域が選定されました。地域脱炭素ロードマップに従い、地域ごとにさまざまな施策に取り組んでいます。2030年までに100箇所の選定地域が決定、計画が実行される予定です。脱炭素社会に向けた動きはこれからも拡大していくので、注目しておきましょう。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

 

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