「デジタルツイン」を利用した都市開発について解説

「デジタルツイン」を利用した都市開発について解説

「デジタルツイン」とは、フィジカルな空間(現実空間)のデータや構造をサイバー空間上に再現する技術のことです。

デジタルツインの目的は、精緻なシミュレーションを行い、その結果を現実にフィードバックしていくことにあります。サイバー空間上に現実空間そっくりの模型を作り、センサーなどにより現実空間から収集した情報をサイバー空間に反映することにより、リアルタイムにシミュレーションを行い、そのシミュレーション結果を現実にフィードバックしていくことを目指しています。

 

デジタルツインで使用される技術とは?

デジタルツインを実現するためには、センサーなどを通じ情報を収集する(IoT)、収集した情報をリアルタイムにサイバー空間に伝える(5G)、伝えられた情報をもとにシミュレーションを行う(CAE)、シミュレーション結果に対するアクションを判断する(AI)、アクションを現実にフィードバックする(AR、VR)という各種の技術が必要になります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

IoT

“Internet of Things”の頭文字を取った言葉で、電化製品などの「モノ」がインターネットと接続して通信する技術を指します。デジタルツインの中で高精度なシミュレーションを行うためには、現実空間から多くの情報を定期的に収集する必要があります。IoTによりあらゆる「モノ」からデータを収集し、仮想空間に反映し続けることはデジタルツインの実現に不可欠な技術といえます。

5G

「第5世代移動通信システム」の略称で、日本では2020年から使われ始めている無線ネットワークの規格です。5Gの特徴として、高速大容量の通信が可能で品質が高いこと、さらには多数の同時接続が実現できるといったものがあります。デジタルツインにおいては、多くのセンサーなどから情報を高頻度で収集し、サイバー空間に伝えていく必要があるため、高速・大容量・同時接続が可能な5Gは重要な技術になります。

AI

“Artificial Intelligence”の略で日本語では「人工知能」と訳されます。人工知能とは何かという明確な定義は定まっていないのですが、ここでは様々な情報をもとに一定の判断をするもの、ととらえるとよいと思います。デジタルツインにおいては現実空間より膨大な情報が流れてきて、これを効率的に分析することが必要になりますので、AIを活用することが不可欠となります。

CAE

“Computer Aided Engineering”の頭文字をとった言葉で、機械などの設計の際にコンピュータを利用してシミュレーションや解析を行う手法のことです。製造業においては、試作機を何度も制作する非効率を避けるため、あらかじめコンピュータ上でシミュレーションをしたうえで設計を行う、という手法が取られてきました。CAEはこのための技術ですが、デジタルツインのシミュレーションを実現するための手法としても注目されています。

AR、VR

ARは”Augmented Reality”、VRは”Virtual Reality”の略でそれぞれ拡張現実、仮想現実と訳されます。ARは現実世界に仮想世界を反映させる技術で、例えばシミュレーションの結果をスマートグラスやスマートフォンなどを通じて現実に投影するようなことが考えられます。

一方、VRは仮想世界に現実を反映させる技術で、シミュレーションの結果を仮想現実の世界の中に反映させ、それを仮想現実の中で体験することができます。いずれもシミュレーションの結果を視覚化し実体験することができるという点で、デジタルツインの実用化に向け期待がかかる技術となります。

 

 

デジタルツインを応用した活用例とは?

自動車業界

自動車業界においてもデジタルツインが活用されています。例えばテスラでは、日々車両の運用データを収集・分析することにより、燃費やブレーキ性能など自動車を制御するソフトウェアを定期的にアップデートしています。ソフトウェアのアップデートだけではなく新車の開発においても、設計したものをデジタルツイン上でシミュレーションすることにより問題を洗い出すといった活用が可能です。

建設業界

建設業界では、特にビルやダムなどの大規模建築を行う際、大量の資材や時間を投入することになるため、事前にしっかりとしたシミュレーションを行うことが重要になってきます。このシミュレーションにデジタルツインを活用する動きが広がっています。

たとえば鹿島建設ではオービック御堂筋ビル新築工事にてデジタルツインを活用すると表明していますし、その他にも小松製作所が中心となって建設現場のデジタルツインを構築する新会社を設立するなど、各社でデジタルツインを活用する動きが進んでいます。

 

都市におけるデジタルツインとは?

こうしたデジタルツインの取り組みを推し進め、都市のデジタルツインを作成しようという動きも進んでいます。その中で有名なものがバーチャルシンガポールの取り組みです。シンガポールでは都市全体を仮想空間上に3Dで再現し、その3D都市上でシミュレーションを行うことで各種の都市問題の解決やさらなる発展を目指そうとしています。また、このデジタルツインは行政だけでなく、企業や個人などあらゆる人が活用できるようになることを目指しています。

同様の取り組みは日本でも進められています。国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のリーディングプロジェクト「PLATEAU」(プラトー)では、都市活動のプラットフォームデータとして東京23区などの3D都市モデルを整備し、そのユースケースを開発していくことを目指しています。

・デジタルツインによる都市開発に必要な3つの要素

都市のデジタルツインといっても、必要となる要素はそのほかのデジタルツインと大きくは変わりません。

一つは情報です。現実空間上にセンサー端末などを設置しリアルタイムで情報を収集することが重要になります。さらに、都市のデジタルツインにおいては、過去の情報を蓄積し、過去からの推移や特定条件下でのシミュレーションも可能にする必要があります。そして、それらのデータに対し、分析・予測の前提となる条件を加えて、シミュレーションしていくことになります。

二つ目が3D都市モデルによるシミュレーションです。先のシンガポールの例や、日本の東京23区でも、3Dモデルを作成したうえで、そこに情報を流しこむことによりシミュレーションすることを目指しています。

そして最後に必要なものがフィードバック機能です。分析・シミュレーションした結果を現実に反映すること。シミュレーションの結果を直接・間接的にリアル空間に働きかけることによってこそ、デジタルツインの意味があると言えます。

・都市型デジタルツイン例

それではデジタルツインを通じてどのようなことが実現できるのでしょうか。「PLATEAU」(プラトー)を受け、東京都では「デジタルツイン実現プロジェクト」を立ち上げ、そこで3つの実証実験を進めようとしています。

一つ目は人流を可視化し(特に災害時などにおいて)混雑回避をすること、二つ目は地下埋蔵物(上下水道・電力・ガスなど)を3Dモデル化し設備事故の発生を減らしたり地下の施行状況の地上への影響を調べたりすること、三つめは個人個人がスマートフォンによって3Dデータを更新し、3D都市モデルをリアルタイムで更新していくというものです。

この東京都の実証実験の例以外にも、河川の監視・コントロールや、自動運転の実現など都市のデジタルツインには様々な活用方法が考えられます。

 

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デジタルツインを導入したくても「自社の技術では難しい」と感じるところもあるでしょう。デジタルツインの実現を行いたいなら、アイディオットの利用がおすすめです。それは、以下のような特徴があるからです。

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まとめ

デジタルツインは、現実空間のコピーをサイバー空間上に作成し、シミュレーションを行い現実にフィードバックする技術であり、ますますの活用が見込まれます。そして、都市のデジタルツインは都市問題の解決やさらなる発展に向けて、今後本格的に実証実験が進んでいくものと予想されます。

都市のデジタルツインは将来的には企業・個人へ開放されることになるため、私たちもその動向を注視し、その活用方法について今から考えておく必要があるのではないでしょうか。

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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