CLO選任義務化でサプライチェーンを効率化!物流におけるCLOとは?

CLO選任義務化でサプライチェーンを効率化!物流におけるCLOとは?

政府は、2024年2月13日に物流関連法の改正案を閣議決定し、一定規模以上の荷主に対して「CLO(物流統括管理者)」の設置を義務付ける方針を固めました。

特定荷主に該当する企業は約3,000社にものぼると見られているため、多くの事業者が今から適切な人材の確保に向けて動き出す必要に迫られることになります。

CLO(物流統括管理者)の基本概要や設置の背景、主な役割と責任、資格要件などについて詳しく解説していきます。

 

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CLO(物流統括管理者)とは?

CLO(Chief Logistics Officer、物流統括管理者)は、企業における物流・サプライチェーン全体の戦略的な管理と運営を担う上級役職です。

CLOは、商品の調達から生産、在庫管理、配送まで、物流に関するすべてのプロセスを統括し、目的達成のために取引先や事業者内における経営トップや役員、販売部門や調達部門などの関係各署との交渉や調整を行う役割を担います。

 

CLO(物流統括管理者)設置の背景とは?

日本におけるCLO設置の背景には、複数の要因が絡み合っており、特にグローバル化、技術革新、リスク管理の重要性が高まっています。

また、2024年4月1日から、働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に規制されることを受けて、一部のモノが運べなくなる「2024年問題」にも関連しています。

グローバル化の進展

日本企業は、製造拠点や市場が世界各地に広がり、サプライチェーンがより複雑化しています。サプライチェーンを効率的に管理するためには、全体を統括できるCLOの存在が不可欠です。

CLOは、国際間で異なる法規制や物流手段に精通し、コスト削減やリードタイム短縮を実現する役割を担います。

IoT、AI、ブロックチェーンといった先進技術の導入

IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ブロックチェーンといった先進技術の導入により、物流業務の効率化や自動化が進んでいます。デジタル技術を活用することで、在庫管理や配送の効率が向上し、コスト削減が可能です。

CLOは、これらの新しい技術を統括し、企業のサプライチェーン全体に反映させる重要な役割を担います。

リスク管理の強化

日本は地震や台風などの自然災害のリスクが高いため、物流の途絶を回避するためのリスク管理が非常に重要です。また、グローバルなサプライチェーンにおいては、地政学的リスクやパンデミックといった予測不可能な事態にも対応する必要があります。

CLOは、これらのリスクを予測し、リスク管理戦略を策定することで、企業のサプライチェーンを安定させる役割を果たします。

物流の2024年問題

物流の「2024年問題」とは、2018年の「働き方改革関連法」により、トラックドライバーの年間労働時間の上限が規制され、2024年4月からはさらに厳しい労働時間規制が導入されるといった、日本における労働時間規制の強化により、トラックドライバー不足と物流コストの上昇が予想される問題を指します。

トラックドライバーの労働時間が制限されるため、輸送効率の低下やドライバーの不足が深刻化し、ドライバー不足により、人件費が高騰し、企業の物流コストが増加します。このような物流の停滞やコスト上昇は、商品価格の上昇や供給遅延を引き起こし、最終的には消費者にも影響を与える可能性があります。

物流の2024年問題に対応するため、日本企業は物流の効率化を進める必要があります。CLOは、この物流改革の先頭に立ち、輸送の最適化、ルート計画の自動化、倉庫管理システムの導入など、技術を活用した効率化戦略を推進します。

また、モーダルシフト(トラック輸送から鉄道や海上輸送への切り替え)や共同配送の活用も、CLOのリーダーシップによって進められます。

CLOの主な役割と責任

CLOは、企業のサプライチェーン全体の戦略的管理を担当し、物流機能の効率化、コスト削減、顧客満足度の向上を目指して、以下のような主要な役割と責任を持っています。

戦略的計画の策定

CLOは、企業の物流機能を強化し、コスト効率を高めることを目的に、倉庫や配送ネットワークの設計、輸送手段の最適化、在庫管理戦略の開発など、物流およびサプライチェーン全体の戦略を策定します。

業務の効率化とプロセス改善

CLOは、新しいテクノロジーの導入、プロセスの自動化、サプライチェーン全体の可視化など、業務プロセスの改善を通じて物流の効率を最大化します。これには、デジタルツイン、IoT、AIなどの先進技術を導入し、リアルタイムでのサプライチェーンの可視化やデータ分析を行い、より効率的な運営を実現します。

また、業務プロセスのボトルネックを特定し、改善策を実施することで、リードタイムの短縮やコスト削減を達成します。

コスト管理と予算策定

CLOは、輸送費、保管費、在庫コストなどを最適化し、企業の収益性を向上させるための施策を推進します。

また、CLOは物流部門の予算を策定し、コスト削減とサービスレベルのバランスを取るための施策を講じます。

リスク管理とコンプライアンス

CLOは、自然災害、政治的不安、パンデミックなど、さまざまなリスク要因に対応するためのリスク管理戦略を策定し、ビジネスの継続性を確保します。

また、国際的な規制や法律に準拠した物流運営を確保するため、コンプライアンス管理も重要な役割の一つです。

サステナビリティとCSRの推進

現在、企業はサステナビリティの重要性が増しており、グリーンロジスティクスの導入やカーボンフットプリントの削減など、物流プロセスにおける環境負荷の軽減を推進します。

また、サプライチェーン全体でのエネルギー効率向上や廃棄物削減も担当します。

顧客満足度の向上

CLOは、正確で迅速な配送、柔軟な配送オプションの提供、リアルタイムトラッキングシステムの導入など、物流のパフォーマンスが直接顧客満足度に影響を与えることを理解し、顧客ニーズに応えるための物流戦略を策定します。

顧客体験を向上させることで、企業のブランド価値と競争力を高めることができます。

 

このようにCLOは、企業の物流機能を戦略的に管理し、効率化、コスト削減、リスク管理、持続可能性、顧客満足度の向上を実現する重要な役割を担っています。彼らのリーダーシップと戦略的な意思決定は、企業の競争力を強化し、持続的な成長を支える基盤となります。

海外におけるCLOとは

海外ではCLOはすでに浸透しているポジションです。特に、企業が複数の国にまたがる物流ネットワークを運営する際には、CLOは重要な戦略的リーダーシップを発揮します。

アメリカでは、MBA取得者が経営視点で物流をマネジメントするやり方も一般化しており、常に優秀な人材を物流領域に投入し続けています。

以下に、海外におけるCLOの役割とその重要性について詳しく解説します。

Amazon

Amazonでは、異なる地域での消費者需要を予測し、在庫を適切に配置するなど、グローバルに分散した倉庫と配送ネットワークを効率的に管理し、顧客に迅速に商品を届けるために、CLOが重要な役割を果たしています。

NIKE

NIKEは、パンデミック中に発生したサプライチェーンの混乱に対処するため、CLOがサプライチェーンを迅速に再編成し、生産と配送のリスクを最小化するための戦略を実施しました。

ユニリーバ

ユニリーバは、CLOの指導の下、カーボンニュートラルなサプライチェーンを構築するために、再生可能エネルギーを利用した輸送手段を積極的に採用し、CO2排出量の削減を図っています。

 

海外におけるCLOの役割は、物流とサプライチェーン全体の効率を最適化し、企業のグローバル競争力を強化するうえで極めて重要です。技術革新、リスク管理、持続可能性の推進、グローバルサプライチェーンの統合など、多岐にわたる責任を持ち、企業の成功に大きく貢献しています。

CLOに求められる要件とは?

CLOは、企業の物流とサプライチェーン全体を戦略的に管理する役職であり、その役割を効果的に果たすために、特定のスキルや経験が求められます。

リーダーシップ

CLOは、組織内外の、製造部門、マーケティング部門、供給業者、顧客などさまざまなステークホルダーと効果的に連携する必要があります。そのためには、強力なリーダーシップと優れたコミュニケーション能力が不可欠です。中でも、異なる部門との調整や交渉を行い、共通の目標に向けてチームを導く力が求められます。

戦略的思考と決断力

CLOには、企業全体のビジネス戦略と整合性のある物流戦略を構築するための戦略的思考が求められます。物流やサプライチェーンが企業の競争力や利益に直接影響を与えるため、CLOがビジネス全体の理解と経営的な視点を持つ必要があります。

CLOは、サプライチェーン全体の最適化を図り、コスト削減や効率化を達成するための計画を策定します。

物流に関わる知見

商品や資材の輸送、保管、加工、配送などプロセスに関する物流の知見の理解が必要です。これには、輸送方法による特性の違い、共同配送、 倉庫管理、ルーティング、トラッキングなどが含まれます。

データ分析と技術理解

現代の物流管理は、データ主導で行われることが多く、CLOにはデータ分析スキルが求められます。ビッグデータ、AI、IoT、ブロックチェーンなどの先進技術を活用して、サプライチェーンのパフォーマンスをモニタリングし、改善する能力が必要で、これらの技術を適切に導入し、企業全体の効率性を向上させるための知識と経験も重要です。

リスク管理能力

CLOは、自然災害、サイバーセキュリティの脅威など、物流とサプライチェーンにおけるさまざまなリスクを管理する責任があります。リスクを予測し、予防策や対策を講じる能力が求められます。特にグローバルなサプライチェーンを管理する場合、リスクの多様性が増すため、迅速かつ柔軟に対応できるリスク管理能力が重要です。

持続可能性の知識と実践

サステナビリティは、現代の物流管理において重要な要素となっており、CLOは持続可能な物流戦略を策定する責任があります。エネルギー効率の高い輸送手段の選定や、サプライチェーン全体のカーボンフットプリントを削減するための施策など、環境規制を遵守しながら、企業の社会的責任(CSR)を果たすための物流運営を確立します。

このようにCLOは、リーダーシップ、戦略的思考、データ分析能力、リスク管理能力、持続可能性の知識と実践など、多岐にわたるスキルと職能を持つことが求められます。これらの能力を駆使して、企業の物流とサプライチェーンを最適化し、企業全体の競争力を高めることがCLOの主要な役割となります。

今後CLOに期待されることとは

今後、CLOには、デジタル化と自動化の推進、持続可能な物流の推進、リスク管理と強化、カスタマーエクスペリエンスの向上といった多岐にわたる分野でリーダーシップを発揮することが期待されます。以下、詳しく解説していきます。

デジタル化と自動化の推進

今後、物流業界では、デジタル化と自動化の重要性がますます高まっていくでしょう。CLOには、AI、IoT、ビッグデータ、ロボティクスなどの先進技術を積極的に導入し、物流プロセスの効率化と最適化を進めることが期待されます。

例えば、自動化された倉庫管理システム(WMS)やロボティクスを活用し、在庫管理や出荷プロセスを効率化したり、AIを活用して、需要予測や在庫最適化を行い、過剰在庫や欠品を防いだりします。

持続可能な物流の推進

環境問題が企業の持続可能性に直結する中で、物流業務の中でのCO2排出量の削減や、再生可能エネルギーの利用、サプライチェーン全体でのエネルギー効率の向上など、CLOはグリーンロジスティクスの推進役としての役割を果たすことが期待されます。

例えば、よりエコロジカルな輸送手段を採用し、輸送中のCO2排出量を削減したり、企業の物流活動が環境に与える影響を測定し、持続可能な目標を設定・達成が期待されます。

リスク管理と強化

グローバル化が進む中で、自然災害、地政学的リスク、パンデミックといったサプライチェーンの脆弱性が露呈しています。CLOには、これらのリスクに対処するためのリスク管理と、迅速に回復できるレジリエンスのあるサプライチェーンを構築することが求められます。

例えば、代替供給源や物流ルートを確保し、リスクに強いサプライチェーンを構築したり、災害や緊急事態に迅速に対応できる体制を整えることが期待されます。

カスタマーエクスペリエンスの向上

eコマースの急成長や顧客のニーズの多様化などにより、顧客体験の向上が企業の競争力を左右する重要な要素となっています。CLOは、物流を通じて迅速で正確な配送サービスを提供し、顧客満足度を向上させることが期待されます。

例えば、配送ルートの最適化や、複数の受け取りオプションを提供することでラストマイル配送の最適化をしたり、顧客が商品の配送状況をリアルタイムで追跡できるようにし、透明性と信頼性を高めることが期待されます。

 

まとめ

CLOの選任義務化は、企業のサプライチェーン管理を一段と効率化し、競争力を高めるための重要な第一歩です。物流におけるCLOは、グローバルな視点でサプライチェーンを戦略的に管理し、技術革新や持続可能性を推進しながら、リスク管理や顧客満足度の向上を図る役割を担います。

企業が急速に変化する市場環境に適応し、持続的な成長を遂げるためには、CLOのリーダーシップが不可欠です。CLOの選任を通じて、企業は物流とサプライチェーン全体の最適化を図り、将来の成功に向けた基盤を強化することができるでしょう。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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