「物流」という言葉はよく目にしますが、一般的にはトラックなどで荷物を運送・配達するイメージしか湧かないでしょう。物流とは物的流通の略で、生産物を生産者から消費者まで引き渡す過程のことで、その間の距離と時間を克服する作業と言えるでしょう。
物流を機能別に分類すると「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」という5大機能で成り立っており、通常はそれらの機能が常に反復されていることから、システム化することで物流の効率が上がると考えられます。
この記事では「物流システム」とは何かを基本的な部分から解説し、導入の必要性について具体例を参考にしながら考えていきます。
物流システムの種類って?代表的なシステム4種をご紹介!
物流システムといっても先ほどの5大機能の全てを網羅することは現実的ではなく、不可能に近いと言えるでしょう。なぜなら物流に係わる多くの企業・事業者・生産者が、物流の一部分にしか関わっていないからです。
多くの物流システムは機能の一部分をシステム化したもので、それらを包括的に最適化することを「ロジスティックス」や「サプライチェーンマネジメント」と言います。
ここからは物流の機能ごとに見られる物流システムについて見ていくことにしましょう。
配送管理システム
配送管理システムは、商品や荷物の配送業務を効率的に管理するためのシステムです。主な機能として、配送ルートの最適化や荷物の追跡、配送スケジュールの管理、ドライバーの配車などがあります。
運行管理システム
運行管理システムは、トラックや車両の運行管理を効率的に行うためのシステムです。主な機能として、運行スケジュールの管理、車両の点検やメンテナンスの予定管理、ドライバーの勤怠管理などがあります。
生産管理システム
生産管理システムは、生産工程を効率的に管理するためのシステムです。主な機能として、製品の生産計画や生産ラインの稼働管理、原材料の在庫管理や発注管理、製品の品質管理などがあります。
在庫・倉庫管理システム
在庫・倉庫管理システムは、商品や製品の在庫管理を効率的に行うためのシステムです。主な機能として、在庫状況の把握や在庫数の調整、入出庫管理や棚卸し作業の支援、製品のバーコード管理などがあります。
以上が、代表的な物流システムの4種類です。
物流システム導入におけるメリット・デメリットとは?徹底比較で導入への悩みをつぶそう!
物流システムの導入には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
業務効率の向上
物流システムを導入することで、業務プロセスの自動化や業務の見える化が可能となり、業務効率が向上します。例えば、配送管理システムを導入することで、配送ルートの最適化や荷物の追跡などを自動化し、作業時間の短縮や配送コストの削減につながります。
データの集積と分析が可能
物流システムを導入することで、データの集積と分析が可能になります。これにより、過去の業務実績や市場動向などを分析し、業務改善につなげたり、将来の需要予測などに活用することができます。
品質の向上
生産管理システムを導入することで、生産ラインの稼働状況をリアルタイムで把握し、品質管理につなげることができます。また、在庫・倉庫管理システムを導入することで、在庫の調整が適切に行われ、品質の低下や廃棄の減少につながります。
デメリット
導入コストの高さ
物流システムの導入には、システム開発やハードウェア・ソフトウェアの導入などのコストがかかります。特に、中小企業などの資金力に限りがある企業では、導入に踏み切るにあたっての慎重な検討が必要となります。
システム運用の複雑化
物流システムの導入により、業務プロセスが自動化され、情報処理が大幅に増加することがあります。このため、システム運用に必要な知識やスキルが必要となり、運用コストが増加することがあります。
システムの柔軟性の低下
物流システムを導入することで、業務プロセスが自動化され、一定の手順に沿って業務が進められるようになります。そのため、システムが対応できない特殊な業務や要望に対して、柔軟に対応できない場合があります。このため、システム導入前に、業務プロセスや要件をしっかりと洗い出し、必要に応じてカスタマイズや拡張性の高いシステムを選択する必要があります。
セキュリティの問題
物流システムには、取扱い情報が多岐に渡るため、情報漏洩やハッキングなどのセキュリティ上の問題が発生する可能性があります。これに対して、適切なセキュリティ対策を施す必要があります。
以上のように、物流システムの導入にはメリットとデメリットがあります。導入にあたっては、業務プロセスや要件を正確に把握し、システム導入前に慎重に検討することが重要です。また、システム導入後も、適切な運用やセキュリティ対策を行い、システムの改善や最適化を図ることが重要です。
うまくいった実例をもとに検討しよう!大手企業の物流システム事例3選!
物流システムの導入にメリットとデメリットがあることは分かりましたが、現実的には平時のメリットの方がはるかに大きいため、多くの企業が物流システムを導入して、事業の効率化を図っています。
物流システムを導入した企業の事例を見てみることにしましょう。
小松製作所
小松製作所は建設機械の国内シェア第1位の企業ですが、同社では製造工程内の物流の効率化のため、工場内の物流車両の動線を把握・分析するシステムを導入しています。
物流車両に搭載したタグが定期的に電波を発信し、それによる位置情報の分析から無駄な動線が多い物流車両を発見し削減する取り組みをしており、結果として生産性の向上に結び付いています。
雪印メグミルク
雪印メグミルクでは京都工場の増設に合わせ、物流倉庫の搬出設備では一般的だったコンベア方式から、高度にシステム化された無人フォークリフトを導入することで、倉庫内のスペースを有効活用することと、冷所での作業を自動化することで作業環境の改善にも成功しています。
象印
炊飯器や魔法瓶でお馴染みの象印は、全国に6か所ある配送センターに物流システムを導入しています。そのシステムでは出荷指示から実際の出荷までの作業を管理し、それまで各配送センターでバラバラだった作業手順の標準化しました。
それまで各現場の「職人技」ともいえる配送作業に頼り切っていたリスクからの解放と言えるでしょう。
スマート物流の最先端はデジタルツイン!
最近聞かれることが多くなったデジタルツイン(Digital twin)という言葉ですが、簡単に説明すると現実世界で起きていることをデジタル空間に再現(複製)し、それをシミュレーションすることでこれから起こりうることを予測する技術です。
各分野での応用が期待されていますが、これからのスマート物流にも欠かせない技術としてデジタルツインは注目されています。
物流のデジタルツインでできること
物流において事業者を悩ます問題に過大な在庫があげられます。これを一言でいえば「見込み違い」なのですが、この将来予測にデジタルツイン技術を応用したシミュレーションを用いることで解決することが期待されています。
つまり従来は人の経験に頼っていたことを、AIに学習させ経験させることで自動化していく試みです。
また現実世界の工程を再現する中で、オペレーションの問題点が見つけられることも実現可能でしょう。これらも「人の経験による勘」という非論理的なことより、あくまでAIの論理的考えを活用する挑戦です。
アイディオットのプロダクト「ADT」ならデジタルツインを実現!
デジタルツインの将来性は分かったとしても、物流システムにそれを取り入れるとなると「システム開発からとなると費用が」という心配が先に立ってしまいます。しかし比較的ハードルが低いデジタルツインがあるのです。
アイディオットのプロダクト「ADT(aidiot digital twin)」であれば、すでにあるベース機能へ自社の要望を追加依頼するだけなので、ゼロベースのシステム開発よりコスト面で圧倒的に魅力的です。
まとめ
経済の根幹をなすと言っても過言ではない「物流」ですが、近年は燃料費の高騰や脱炭素への取り組み、また人員不足など物流を取り巻く環境は厳しさを増しています。
そんな時代だからこそ物流システムによる効率化・省力化は、これからの物流を考えるうえで正面から向き合わなければならない課題です。課題を先延ばしすることなく、スピード感を持って検討しるべき重要な事項だと認識しましょう。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。