カーボンニュートラルの実現に向け、日本中でさまざまなサステナブルな取り組みがおこなわれています。再エネの推進、ゼロエミッション、省エネルギー化などが代表的です。それぞれの取り組みについて紹介します。
再生可能エネルギーの推進
CO2を排出しない再エネの推進は、カーボンニュートラルの実現に欠かせません。再エネによる発電とは、太陽光・風力・バイオマスなどがエネルギー源の発電です。それぞれがどのような発電なのかを簡単に解説します。
太陽光発電
日本で急速に普及が進んでいる太陽光を利用した発電方法で、2019年の段階で世界3位の累積導入量を誇ります。太陽光発電装置の進歩はめざましく、発電効率が非常に良いタンデム型の太陽電池や、軽くて扱いやすくてビルの壁面に設置可能なペロブスカイト型太陽電池など、さまざまな技術の開発がおこなわれています。
風力発電
風の力を利用した発電方法で、陸上はもちろん洋上にも設置されています。世界的に見て普及が進んでいるのはヨーロッパですが、日本でも徐々に普及しています。安定した風量に期待できますし、太陽光と違って夜間の発電が可能です。
ただ、建設するのに時間とコストがかかる点と、洋上の場合は送電方法が課題です。まだ発展途上の発電方法だといえるでしょう。
バイオマス発電
動植物がもとになっているバイオマス資源を有効活用する発電方法で、廃棄物を無駄にすることなく循環できる点が特に高く評価されています。ただし、バイオマス資源を集めたり運搬や管理に手間がかかることから、まだそれほど普及が進んでいません。今後のさらなる拡大が期待されています。
ゼロエミッションへの取り組み
ゼロエミッションとは、すべての廃棄物を再利用することでゴミをゼロにする資源循環型社会システムのことです。それが実現すれば、カーボンニュートラルに向けて大きく前進するのは間違いありません。非常にサステナブルな社会システムです。
日本では政府主導によるエコタウン事業が発足するなど、ゼロエミッションが各地域の基盤となるように積極的にはたらきかけています。そうした政府のはたらきかけを受け、地方自治体や各企業がゼロエミッションの実現に向けて取り組んでいます。
省エネルギー化
省エネとは、有限であるエネルギーを無駄なく使うことです。省エネという言葉が広く浸透している一方で、家庭のエネルギー消費量は年々増加傾向です。家庭でエネルギー消費が大きいのは電気なので、電気の省エネ化を優先的におこなう必要があります。
また、1979年制定の省エネ法により、企業には補助金や助成金などの支援体制が整っています。エネルギー消費効率の大幅な改善を目指して努力を重ねています。
カーボンニュートラルに挑戦している事例
カーボンニュートラルに挑戦してサステナブルな社会を目指す事例を、いくつか紹介します。事例を取り上げるのは、トヨタ自動車・千葉県・信越化学工業・SCSKです。企業や自治体の取り組みを見ていきましょう。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表し、人・車・自然が調和するサステナブルな社会の実現に向けて取り組んでいます。2050年までにカーボンニュートラルを実現し、新車のCO2排出量の大幅な削減を目標にしています。また、生産工場・使用・廃棄といったライフサイクルのCO2排出量ゼロも目指しています。当初は2050年までを目標としていましたが、2021年には2035年までと達成期限を前倒ししました。
千葉県
カーボンニュートラルを目指したサステナブルな取り組みをおこなっているのは、企業だけではありません。地方自治体も積極的に取り組んでいます。
千葉県は睦沢町の地域新電力「CHIBAむつざわエネジー」など、再エネの普及に力を注いでいます。太陽光や風力といった再エネによる発電により、地域内の企業や家庭に必要な電力を供給しています。千葉県は2019年に台風による大規模な災害に見舞われましたが、停電発生からわずか5時間後には電力を供給しています。つまり、平時の電力供給を支えているだけでなく、災害時の防災拠点としての役割も担っています。
信越化学工業
信越化学工業は、サステナブルな社会を実現することに尽力している会社です。たとえば同社のレア・アースマグネットは、小型ながら従来磁石の約10倍の磁力があります。この特性を活かし、電気自動車やエアコンのコンプレッサーなどに導入されています。エネルギー効率が良いため、最大で10%ほどの消費効率改善が可能です。これは消費する電力量の削減とほぼ同義なので、CO2排出量の削減につながります。また、風力発電装置のモーターとしても使われるなど、再エネの普及にも貢献しています。
SCSK
SCSKは、昨今のIT社会の基盤となっているデーターセンター運営でカーボンニュートラルの実現を目指しています。高効率で災害にも負けないデーターセンターの運営をサポートします。たとえばデーターセンターの消費電力を削減するため、省エネ設備を積極的に導入しています。さらに、環境負荷の軽減やIT機器のリサイクルなどにも取り組んでいます。
また、自然災害に遭っても機能が失われないように、堅牢な施設を提供しています。サステナブルなデーターセンターを運営することも、SCSKが社会に貢献していることの1つです。
カーボンニュートラルとサステナブルな食への意識について
カーボンニュートラルの実現には、サステナブルな食への意識が欠かせません。キーワードは地産地消・ジビエ・菜食・食品ロス削減です。どのような食への意識なのかを紹介します。
地産地消を意識する
地産地消は、住んでいる地域で生産された農産物を食べることです。農産物の輸送にかかるエネルギーの抑制によって、CO2排出量を削減できます。収穫したばかりの新鮮な農産物なので栄養価が高く、おいしいのも魅力です。また、消費が増えることで地域の農業が活性化されますし、生産者から消費者にすぐに届くので安全性も保証されています。サステナブルな食生活は地産地消が基本です。
食生活にジビエを取り入れる
狩猟によって獲れた天然の鳥獣のことをジビエといい、日本ではシカやイノシシなどの食肉が該当します。このジビエを食生活に取り入れることで、サステナブルな社会の実現に貢献できます。農作物が鳥獣によって荒らされるのを防止できますし、資源をロスなく使い切ることにもつながります。今はジビエ料理を出す飲食店も増えてきているので、食生活に少しずつ取り入れることが可能です。
菜食を取り入れる
今はスーパーなどの小売店で牛・豚・鳥肉が簡単に調達できるようになり、日本人は肉を食べるのが当たり前になりました。その食生活が悪いわけではないですが、牛・豚・鳥肉は飼育過程で少なくないCO2を排出します。そこで、カーボンニュートラルに向け、菜食を取り入れることが推奨されています。なぜなら野菜や果物を食べる菜食は、全体的なCO2の排出量が少ないからです。菜食を取り入れることが、CO2の排出量削減につながります。
食品ロス削減に努める
食品ロスはゴミの量を増加させ燃焼時のCO2排出量を増やしてしまうので、削減に努めなければいけません。日本は年間で約600万トンの食品ロスをしている国なので、この数字をゼロに近付けることがサステナブルな社会の実現には必要不可欠です。約600万トンの食品ロスの半分は家庭から出ているので、他人事ではない身近な問題です。食べ切れない量の食品を購入しないなど、食品ロスの削減に努めましょう。
まとめ
カーボンニュートラルの実現に向けた、サステナブルな取り組みの数々について紹介しました。再エネの推進・ゼロエミッション・省エネルギー化など、すでにさまざまな取り組みがおこなわれています。また、トヨタ自動車や千葉県など、企業や自治体の取り組みについても解説しました。
さらに、身近なテーマの食への意識についても紹介しましたので、内容を参考に食生活に取り入れてみてください。菜食や食品ロス削減などは、すぐにでも実践できる取り組みです。少しずつでも構わないので、チャレンジすることが大切です。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。