【2025年版】貨客混載とは?物流の効率化を実現する新しい輸送モデルを解説

【2025年版】貨客混載とは?物流の効率化を実現する新しい輸送モデルを解説

貨客混載とは?

貨客混載とは、貨物(荷物)と乗客を同じ輸送手段で同時に運ぶ仕組みを指します。従来は貨物はトラックや貨物専用列車、乗客はバスや旅客列車と分かれていましたが、これらを一体化することで効率的な輸送を実現する新たなモデルです。

新幹線やバスの荷物スペースに小口貨物を載せることで、既存の輸送手段をそのまま活用しながら配送を行うことが可能になります。

 

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なぜ注目されているのか?

貨客混載は、物流と公共交通の両面から注目を集めています。その背景には、物流業界が抱える「ドライバー不足」や「地方交通の維持」「脱炭素化」という社会的課題が存在します。ここでは、なぜ貨客混載が有効な解決策として評価されているのか、3つの観点から解説します。

ドライバー不足と物流2024年問題

物流業界では、2024年4月に適用される「働き方改革関連法」により、ドライバーの残業時間が年間960時間(休日労働含まず)に制限されます。これにより、特に長距離輸送や深夜運行が厳しくなり、配送計画そのものが見直しを迫られています。

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ドライバー不足の解決策として、貨客混載は有効です。既存のバスや鉄道を使って荷物も一緒に運ぶことで、専用トラックを手配する必要が減り、ドライバーの負担を軽減できます。特に地方部では、乗客と荷物を同時に運ぶことで、少ない人員でも輸送力を確保できるのがメリットです。

地方路線バス・鉄道の維持と地域交通の両立

地方のバス路線やローカル鉄道は、人口減少や利用者減少によって経営が厳しくなっている地域が多くあります。採算が合わず、廃止される路線も少なくありません。しかし、貨客混載を導入することで、新たな収益源が生まれ、運行を維持できる可能性が広がります。

地方バス路線で荷物の配送を同時に行うことで、輸送コストを分担し、地域交通の維持が図れます。また、乗客だけではなく、地元農産物や特産品を運ぶ取り組みも進んでおり、「物流+地域支援」の役割も果たせます。

脱炭素・CO2削減にもつながる持続可能な輸送

貨客混載は、環境面でもメリットが大きい輸送モデルです。従来、人と荷物を別々の車両で運んでいたため、無駄な走行が発生していました。しかし、貨客混載では「1つの輸送手段で2つの役割」を担うため、燃料消費やCO₂排出量を大幅に削減できます。

新幹線の空きスペースを使って宅配便を運ぶ取り組みや、地方バスに日用品を積載して配送する実証実験など、効率化と環境負荷軽減が同時に実現されています。これにより、企業のESG対応にも貢献し、持続可能な物流モデルとして普及が期待されています。

貨客混載のメリットとは?

貨客混載には、輸送手段を効率化し、収益性を向上させながら、地域経済の活性化にも貢献するなど多くのメリットがあります。詳しく見ていきましょう。

コスト削減

例えば、旅客便(飛行機)で座席が空いている場合、貨物も運ぶ、観光バスで観光客を輸送しつつ、地元農産物を市場や観光地へ配送するなど、一台の輸送手段で「人」と「荷物」を同時に運ぶため、運行コストを削減できます。

環境負荷の削減

離島フェリーで乗客と生活物資を同時輸送すれば、貨物専用便を減らせるなど、一つの車両や便で「人と荷物」を運ぶため、輸送回数が減り、燃料消費も削減できます。

地域経済の活性化

観光列車で地元の特産品を乗客に販売したり、離島フェリーで乗客と一緒に離島特産品を都市部へ配送するなど、貨客混載により、地方の特産品や工芸品を都市部や観光地で販売しやすくなります。特に観光地では、観光客に地元産品を直接販売でき、地域経済の支援にも繋がります。

輸送効率の向上

空いている観光バスのトランクに、地元産品を積んで観光地に運ぶ、タクシーが乗客を運ぶ途中で、近隣地域への小包も配達するなど、空車・空席を減らし、常に「人」または「荷物」を運べるため、輸送効率が向上します。

過疎地・離島での交通維持

離島フェリーで住民の移動と、生活必需品(食品、薬)を同時輸送したり、山間部のコミュニティバスで住民の送迎+地元農産物を市場に配送したりでき、過疎地や離島では、乗客数が少なくても貨物があるため、輸送便を維持しやすく、特に生活物資が必要な地域では、貨客混載が住民の生活支援につながるでしょう。

貨客混載の主なモデルと手段

ここでは、貨客混載の代表的なモデルを3つに分けて、そのメリットとともに具体的に解説します。

バス便活用型:路線バス×宅配便

既存の路線バスや高速バスのトランクスペース、座席下の荷物スペースを活用し、乗客と一緒に荷物を輸送します。地域内のラストマイル配送に効果を発揮し、特に過疎地や高齢者が多いエリアで注目されています。

✔️ メリット

コスト削減:バスの空きスペースを有効活用。追加の車両を手配せずに配送可能。
地域活性化:地方の交通インフラ維持と地域物流支援を両立。
環境保護:CO₂排出量削減。人と荷物を同時に運ぶため燃料消費を抑えられる。

鉄道型:旅客列車の荷台スペースを活用

新幹線や特急列車の荷物スペースを宅配便などの小口貨物の輸送に活用します。高速で広範囲の配送が可能で、都市間の配送効率を向上させます。

✔️ メリット

高速配送:新幹線・特急列車のスピードで即日配送が可能。
地域特産品の流通促進:地域の特産品を都市部に届ける手段としても活用。
安定した運行:鉄道は天候に左右されにくく、定時性が高い。

航空・船舶との連携も始まっている

国内外の航空便やフェリーで、乗客と貨物を同時に輸送します。特に離島や遠隔地への配送で効果を発揮し、観光と物流を両立できます。

✔️ メリット

高速で広域の輸送が可能:航空機は国内外をカバーし、スピーディな配送が実現。
離島や遠隔地の物流支援:フェリー便で日用品や特産品を効率的に輸送。
観光と物流の両立:観光客向けのお土産配送にも対応可能。

貨客混載の事例から見る効果とメリット

JR九州とJR西日本による新幹線貨客混載

2021年11月JR九州は、新幹線「みずほ」「さくら」の客室に空きスペースを活用し、松葉ガニを輸送する「貨客混載」モデルを実施しました。米子駅から鹿児島中央駅まで、旅客列車を利用しながら、生きたままの状態で新鮮な松葉ガニをスピーディに輸送できます。

効果とメリット

・輸送時間の短縮
新幹線の高速性を活用し、輸送時間が大幅に短縮。鮮度が重要な水産物でも安心して輸送が可能になる。

地域特産品の販路拡大
松葉ガニを迅速かつ安全に都市圏へ供給できるようになり、地域の特産品の販路拡大につながる。

・持続可能な輸送モデル
既存の旅客列車の空きスペースを活用するため、追加の燃料やCO₂排出を抑制。環境負荷の少ない輸送を実現できる。

出典)

https://www.jrkyushu.co.jp/common/inc/news/newtopics/__icsFiles/afieldfile/2021/11/15/211115_shinkansen_matsubagani.pdf

神戸市と神戸電鉄株式会社による貨客混載

神戸市と神戸電鉄株式会社は、2025年1月11日から7月末まで、貨客混載の実証実験を実施しています。この取組みは、鉄道輸送による新しい価値の創造を目指すとともに、北区・西区の新鮮な農産物を、新開地周辺の方々が購入できる機会を創出することで、新開地エリアの活性化や地産地消の推進、トラック配送の代替によるCO2の削減等、SDGsの取組みに貢献します。

神戸市北区の岡場駅から新開地駅まで、地元産の新鮮な農産物を鉄道で輸送し、新開地駅すぐの「神鉄食彩館 新開地店」で販売しています。

効果とメリット

・地産地消の推進
地元産の新鮮な農産物を都市部で販売することで、地域農業の活性化と消費者への新鮮な食材の提供を実現

・CO2排出量の削減
鉄道を活用した輸送により、トラック配送に比べてCO2排出量を削減し、環境負荷の軽減に貢献

・地域活性化
新開地エリアでの販売により、地域の商業活性化と住民の利便性向上を図る

・SDGsへの貢献
持続可能な輸送モデルとして、地域社会と環境への配慮を両立

出典)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000178.000078202.html?utm_source=chatgpt.com

秩父市「大滝共同配送サービス」と「貨客混載による買い物支援」実証実験

秩父市は、2022年9月27日から29日の3日間、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便、西濃運輸、福山通運の5社が連携し、大滝地域での共同配送サービスを実施しました。

取り組みとしては、佐川急便、西濃運輸、福山通運が大滝地域向けの荷物を「ヤマト運輸影森営業所」に集約し、ヤマト運輸のトラックが荒川郵便局で日本郵便の荷物を積み込んだ後、各受取人の自宅へ一括配送を行います。

効果とメリット

・輸送効率の向上
共同配送と貨客混載により、各事業者が個別に配送する必要がなくなり、配送回数とコストが削減される。特に貨客混載は路線バスの空きスペースを活用し、環境負荷を抑えた効率的な輸送を実現。

・地域経済の活性化
大滝地域の住民がネットスーパーを通じて商品を手軽に購入できるようになり、買い物利便性が向上。また、地元物流事業者がラストワンマイル配送を担当することで、地域企業の収益機会も創出。

・持続可能な物流モデルの構築
既存の物流インフラや路線バスを活用したことで、追加のCO₂排出を抑制。

出典)

https://www.city.chichibu.lg.jp/10478.html?utm_source=chatgpt.com

導入における課題とハードル

貨客混載を導入する際には、いくつかの課題とハードルが存在します。ここでは、その中でも特に重要な三つのポイントに絞って解説します。

旅客と貨物の“安全・運用ルール”の整備

貨客混載を導入する際には、旅客と貨物を同時に運ぶことによる安全性の確保が最優先です。特に、荷物の取り扱い基準、危険物の規制、積載方法などを明確にし、関係者全員が理解し徹底することが重要です。

地元自治体・交通事業者・物流企業の連携体制

貨客混載は複数の関係者が協力しなければ成り立ちません。自治体は規制の調整を行い、交通事業者は旅客輸送と貨物輸送の両立を計画、物流企業は荷物の管理と配達を担う。明確な連携体制の構築が不可欠です。

荷主・利用者への理解と周知の必要性

貨客混載の仕組みを荷主や利用者に正しく理解してもらうための周知活動が重要です。荷主にはコスト削減や迅速な配送メリットを、利用者には荷物の安全性や追跡方法を明確に説明し、信頼を確保します。

今後の展望と可能性

DXによる運行最適化と需要予測

デジタル技術を活用し、貨客混載の運行を最適化します。リアルタイムデータに基づく需要予測や、AIを用いたルート最適化が可能になることで、無駄な輸送を削減し効率的な運行が実現できます。

観光・医療・福祉との連携で広がる可能性

貨客混載は観光、医療、福祉など、さまざまな分野で応用が期待されています。観光地では観光バスと物流が連携し、医療分野では緊急物資の輸送、福祉施設では生活物資の配達がスムーズに行われます。

都市部でも実現可能?貨客混載の未来像

貨客混載は地方だけでなく都市部でも可能性を秘めています。特にラストワンマイル輸送や、小型電動車両、ドローン、さらには自動運転車を活用したスマート輸送が期待されています。

まとめ

本記事では、貨客混載が新たなインフラとして注目される理由を解説しました。

貨客混載は、ドライバー不足の解消、輸送コストの削減、環境負荷の低減といったメリットを持ちながら、地域の生活インフラを支える手段としても期待されています。一方で、安全管理や事業者間の連携、利用者への周知などの課題もあり、慎重な導入が求められます。

また、物流企業にとっては新たなビジネスチャンスであり、地域にとっては持続可能な物流インフラです。企業や自治体は、地域特性に合わせた柔軟な貨客混載モデルを構築し、物流の効率化と地域支援を両立する道を模索していくことが大切でしょう。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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