脱炭素社会を実現させる社会インフラの変革

脱炭素社会を実現させる社会インフラの変革

脱炭素社会とは

脱炭素社会とは、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする社会のことです。最近よく見聞きするようになったカーボンニュートラルも、ほぼ同じ意味と考えてさしつかえありません。

世界中が協力して脱炭素社会を目指す理由は、二酸化炭素が地球温暖化の主な原因だからです。産業革命以降人の活動による二酸化炭素排出量は増加の一途をたどり、近年は過去に例を見ないほどの異常気象が頻発するようになりました。このまま二酸化炭素を際限なく排出し続ければ、地球環境はさらに悪化してしまいかねません。そこで、この状況を変えるべく、脱炭素社会を目指す気運が高まっています。

日本でも2020年に、脱炭素社会を目指す旨の宣言がされています。宣言のきっかけとなったのが、2015年に結ばれたパリ協定です。世界全体で平均気温の上昇をゆるやかに抑えていき、二酸化炭素排出量の実質ゼロを達成しなければいけません。

脱炭素社会は、世界中の国々の共通目標として認識されつつあります。

 

インフラを脱炭素化へ

インフラは人の生活に深く関わるだけに、脱炭素化が特に強く求められている分野です。そこで、インフラの現状はどうなっているのか、脱炭素化への課題は何なのかをそれぞれ解説します。

現状

たとえば水道の脱炭素化は、浄水場などの効率化を図ることで脱炭素化を試みています。各自治体が民間企業と連携しながら、継続的に効率化に取り組んでいます。すでに本格的に取り組んでいるため、現在の状態から急激に脱炭素化が進むことはさすがに期待できません。

一方の電力ですが、2011年に発生した東日本大震災を契機に脱炭素化が進んでいます。再生可能エネルギーの普及率はまだ高くないものの、少しずつ導入されてきています。

ただ、インフラサービスを享受する利用者側は、脱炭素化の意識に個人差があります。脱炭素化を強く意識し脱炭素のインフラサービスを積極的に選ぶ利用者がいる一方で、特に何も考えない脱炭素化への意識が低い利用者もいます。今は個人の判断にゆだねられているのが現状です。

脱炭素化への課題

インフラを脱炭素化するのは、決して容易ではありません。脱炭素化の設備にすべて切り替えるのはお金と時間がかかりますし、人の生活に深くかかわるためサービスの質は落とせないからです。失敗してサービスの質が落ちるようなことがあれば、住民から激しく非難されるのは想像に難くありません。

また、自治体がインフラの脱炭素化を実現するには、多くの住民の理解が必要です。まだ現状は脱炭素化への意識が高い住民ばかりではないため、まず住民に脱炭素化への意識を幅広く浸透させることから始めないといけません。

脱炭素化への課題は少なくないので、1つ1つじっくりと向き合って解決することが大事です。

 

次世代型インフラとは

脱炭素化を実現するための次世代型インフラには、いったい何があるでしょうか。代表的なのは再生可能エネルギー・スマートシティ・デジタル化社会です。どのようなインフラなのかを簡単に紹介します。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーとは、利用する量以上のエネルギーを自然界から補充できるエネルギーのことです。代表的な再生可能エネルギーは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどです。再生可能エネルギーは利用してもCO2を排出しないため、脱炭素化の実現が可能です。発電の手段として再生可能エネルギーが活用されるなど、脱炭素化を語るうえで欠かせない次世代型インフラです。

スマートシティ

ICTと呼ばれる情報通信技術を駆使してマネジメントし、課題を可及的速やかに解決する持続可能な都市や地域のことです。住民の生活の質の向上、新しいビジネスの創出、経済の好循環、幅広く行き届く福祉など、スマートシティならではのメリットが多々あります。
ICTをフル活用することで都市機能の効率化を図れるため、脱炭素化の実現が可能です。

デジタル化社会

従来の社会は現実にある物やサービスが優先されてきましたが、それらをデジタル化させたのがデジタル化社会です。物に依存しない社会なので、脱炭素化を促進させられます。

情報のやり取りをペーパーレス化したり新しいサービスを創出したりなど、脱炭素化を実現するのにデジタルは欠かせません。近年は仮想空間のメタバースが拡大しつつあるなど、デジタル化社会に少しずつ近づいています。

 

次世代型インフラの課題と展望

万能で非の打ちどころがない印象を受ける次世代型インフラですが、課題が何もないわけではありません。次世代型インフラが抱える課題とその展望について解説します。

課題

次世代型インフラの大きな課題といえるのが、お金がかかってしまうことです。再生可能エネルギー・スマートシティ・デジタル化社会の実現には、莫大な予算が必要です。二酸化炭素を削減できれば将来的に無駄なコストも削減できるので、長い目で見れば経済的なメリットは小さくありません。ですが、始めるためにはまとまった資金が必要です。資金をどう調達するのか、次世代型インフラを導入したい場合には十分検討する必要があります。

展望

莫大な予算が必要となる次世代型インフラですが、それでも脱炭素化を目指して次世代型インフラを導入する動きがあります。たとえば鈴廣かまぼこは太陽光発電などの再生可能エネルギーを積極的に導入し、エネルギー削減に努めています。会社が一枚岩となって脱炭素化に取り組んでいる事例です。

また、香川県高松市は「スマートシティたかまつ」を掲げ、スマートシティの実現に向けて意欲的に取り組んでいます。課題をスムーズに解決し、未来に向かって成長し続ける画期的な都市構想を打ち出しています。

次世代型インフラは予算などの課題もありますが、その一方で明るい展望も開けてきています。

 

インフラを変革脱炭素化の取り組み

インフラを変革して脱炭素化を実現しようとする取り組みが、徐々におこなわれてきています。紹介するのはサービス提供側から使う側へのアプローチと、アプローチによる付帯効果の2つです。それぞれについて解説します。

サービス提供側から使う側へのアプローチ

インフラサービス提供側から使う側へのアプローチの1つに、需要の平準化があげられます。需要の極端な高低差を解消するために、提供側から使う側に積極的にアプローチします。たとえば宿泊業界などで採用されているダイナミックプライシングを、インフラの料金に導入したりなどです。これはピークを避けて利用をすれば、料金が安くなるシステムです。需要が平準化されてインフラサービスが効率化すれば、大きな脱炭素化効果に期待できます。

インフラ制度の制約をクリアする必要はあるものの、料金水準を大きく変更するわけではありません。使う側は料金が全体的に値上げされるわけではないため、不満の声が上がる可能性は低いといえるでしょう。

付帯効果にも期待

インフラサービスの需要平準化を実現することは、脱炭素化以外の付帯効果にも期待できます。たとえば施設スケールの最適化が該当します。最適化できれば設備投資を必要最低限に抑制できるため、無駄な資金を投じなくてすみます。無駄な資金を投じないので予算に余裕が生まれ、脱炭素化に向けた取り組みにたっぷりとお金を使えます。

しかも、インフラ施設の運営が安定すれば、コスト削減効果も見込めます。需要が平準化すればピーク時のリスクも軽減されますし、さまざまな付帯効果を期待できます。

 

まとめ

脱炭素社会を実現させるために必要不可欠な社会インフラの変革について解説しました。脱炭素社会の実現には、インフラの変革が欠かせません。現状はまだまだ課題を抱えていますが、再生可能エネルギー・スマートシティ・デジタル化社会といった次世代インフラが徐々に導入されつつあります。需要の平準化といった新しい取り組みによるインフラの変革も期待されていますし、国内のインフラは過渡期に突入したといえるでしょう。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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